第140回('12/05/24)

【転載】
「VCN合唱団」第8回定期演奏会('12/05/19)「演奏にあたって」
&【感想】

演奏にあたって
音楽監督・常任指揮者  当間修一

ビクトリアの作品からは聖母賛歌の一つ、Salve Regina「めでたし元后(げんこう))」五声と六声の曲を、
そして復活祭後40日目に祝われるキリストの昇天を記念する Ascendes Christus「キリストは高みに昇り」を選びました。
ビクトリアを冠する合唱団として、全曲演奏する一環です。
いつも深い敬虔な祈り、宗教的情熱を感じるビクトリア作品に魅了されます。
人間の温かい血を感じるがゆえでしょう。熱き真摯な祈りがここにあります。

当間 修一 /「この愛しきものに」より
私が営む〈多くの人々との練習〉の中で、〈指揮するコンサート〉の中で、そして時事の出来事を見聞きする中で、「愛しい」ものへの想いを綴りたいと曲を書きました。
シンプルな構成とハーモニー。そこに真実を見い出したいとの思いが強くあります。
「VCN合唱団」の「真」が見えるのではないか? そう期待する私です。

千原 英喜 / 十字架上のキリストの最後の言葉
日本の文化に新しい光を照らし続けている氏の音楽は異彩を放ちつつ確実な歩みを続けています。
日本人とは何か?日本文化とは何か?そのアイデンティティとは?
日本・東洋の民族性や宗教性をテーマに書いてきた氏が《キリストの言葉》を書きます。
氏のイメージは広くて深い。確かな表現力で《キリストの言葉》を紡ぎました。
ここにもまた「日本」があります。

鈴木 憲夫 / 永久ニ
鈴木憲夫の曲は優しく、そして無類の熱さがある。人の根源のダイナミックな部分を呼び起こす。
「永久ニ」。それは〈今を生きる〉私たちに、命の尊さを通して生命の連鎖・連帯性とも言うべき壮大な世界を繰り広げます。
人として叫ぶ〈呼応する生命の喜び〉、人間に対する慈しみと賛歌。
終章に歌われる核心、宇宙のもと/心を澄ませば/聞こえる/声が聞こえる/すべての生命の声が/聞こえる」・・・・・深遠です。

今、益々「VCN合唱団」と演奏するのが楽しくなっています。協調によるハーモニーの中で、一人一人の可能性が広がり始めたからです。
曲の内容に相応しい響きも備わってきたと思っています。
表現力も《大人の合唱団》になりつつあるのではないかと思っています。
創立して第8回目の定期演奏会、成長は続けられている。それが楽しさに通じているのだと思います。

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【感想】

先ず音楽に対する反応が早くなりました。指揮に反応する、これがライブを楽しむコツと考えます。
一瞬一瞬変化しつづける音楽。それはホールを充たしている空気に反応すること。
紡がれている音符の変化、聴衆の反応(呼吸・体温)、ホール全体の臨場感、これらに反応することです。

第一声から気合充分でした。テナーの入りがこの演奏会の全てを暗示していたと思います。
「VCN合唱団」の特徴は澄んだ声、声の持久力と均一性、伸びのある声、若くきらびやかな声。
これらは一転して短所として評されることもあるのですが、私は彼らの成長のプロセスにおいて最上の姿として表してくれたと思っています。 創設者、指揮者としてこれほど嬉しいことはありません。

もう一つ嬉しいこと。それはメンバー個人の存在感が増していること。
ソロを受け持つメンバーが増えています。そしてまたセミコーラスなど少人数でのアンサンブルが安定したものになってきました。
これはそれぞれの歌に対する、そして合唱に対する気構えが充分であることの証しです。
私の「この愛しきもの」の各曲でそれを見事にやってのけました。
ここに至って、私の「誇れる」合唱団と言って良いでしょう。

名前

椅子に座っての指揮です。音楽に集中したいとの思いで座りました。モテットのフレーズごと変化する音楽。各曲の内容の深さ、書法もテクニカルな部分が多くありました。
これらに集中したいゆえのことでした。身体をもう少し調整して「立っての指揮」に戻したいと思っています。

千原英喜さん、鈴木憲夫さんにもお出で頂きました。ご両人とも本当にお忙しい中でのご来場です。ここに改めてお礼を申しあげます。
千原英喜さんの「十字架上のキリストの最後の言葉」、いい曲です。
まだ未出版(近々出版の予定と聞いています)なのですが、団員も内容を理解して最善を尽くそうとの良い演奏をしてくれたと思います。
鈴木憲夫さんの「永久ニ」、この演奏会での白眉でした。声の立ち上がり、ハーモニーの安定性、アンサンブルの確かさ、全てにおいて渾身の演奏だったと思います。
憲夫さんの満足気なお顔を見て、とても嬉しかった私です。

名前

8回目の定演が終わりました。すでに次回の演奏会(教会コンサート)の練習に入る合唱団です。
これからも声を磨き、アンサンブルを磨き、響きを磨き、そして何よりも「人」を磨いて次回へと繋ぎます。
また一段、ステップアップした「VCN合唱団」です。

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