第2回

「アマチュア」か「プロ」か?

前回に続いて「アンサンブル」のことについて書こうと思っていたのですが、もう一つその前に書いておかなければならない問題があったことに気付きました。
技術論を展開するとき、受取手の音楽的イメージや技術取得に対する意識の高さを考慮する必要があります。そうでなければ不毛の論となりかねないからです。
書き始めてみて、その前提となる「アマチュア」「プロ」の問題を述べておくことがより理解を深めることになるだろうと思いました。
多くの人達が合唱は「アマチュア」、器楽は「プロ」だと思っています。
しかし、器楽奏者の中にはアマチュアの人達と比べて、技術的にも精神的にも劣っている人達が結構多いですし、合唱人の中にはプロ以上の実力を備えている人達もいることは紛れのない事実です。
また、互いにそれぞれの領域にへばりついての「縄張り意識」がとても強く、現状では真の意味での良き交流は行われていないように思えます。
「アマチュア」とか「プロ」とかの言葉を使うときにも意味をごちゃ混ぜにしているケースをよくみかけます。上の例でもそうなのですが、音楽家の理想像を言うときによく使われる「技術はプロで、精神はアマチュア」という言葉がそのよい例でしょう。
しかし厳密にいうならば、「アマチュア」か「プロ」かのこの問題は、職業にしているかしていないか、これだけです。技術の程度や精神の問題ではありません。
次のような質問を以前よく受けました。「当間さんの合唱団はアマチュアですか?それともそうじゃないんですか?」です。答えはこうです。
室内オーケストラの「アンサンブル・シュッツ」はプロ活動です。
「大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団」はアマチュアです。「室内合唱団」と「声楽アンサンブル」は「セミプロ」です。「セミプロ」とはマネジメント関係者の評価です。そのマネジメント関係者の我々の技術評価は「プロ以上」ということに現在なっています。しかし私たちの目標は実質的に「プロ」になることです。
私が一貫して言ってきたことは「アマチュア」とか「プロ」とかの問題では実はありませんでした。私の目指したこと、それは「団員一人一人が納得できる、最高の演奏をしたい」これだけです。その最高の演奏とは「曖昧模糊としたものではなく、全てにおいてクリアーで明快な表現。ピッチであれ、声部の入りであれ、アバウトでなく技術取得に取り組む」このことでした。
合唱団を「プロに」とは、安心して技術と練習に取り組めるような環境にしたいとの思いからです。
当初、大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団は他の合唱団からは距離を置いて見られがちでした。また、「プロ」や「プロ意識」の強い合唱団からは、そういったものによくありがちな「無視」でした。
この「マイヌング」のページで書いていこうとした「アンサンブル」の問題はこの視点から述べていくことになると思います。
「音楽芸術」「舞台芸術」が未来にとっても人間に必要なものとなるためには「望まれる演奏」を創造することです。鑑賞に耐える、聴衆に受け入れられ、支持される演奏を心掛けることです。
演奏者とその関係者だけが喜び騒いでいるような演奏会ではなく、「アマチュア」や「プロ」にこだわらず、真に良い演奏を心掛ける、このことだと思います。
次回はその「アンサンブルの問題」の続きです。

第2回「アマチュア」か「プロ」か?