第11回

もっとも大切なもの(2)

前回のような事を書くと決まって「?」の顔や、誤解される場合が多いです。
文才が無いものですから巧く表現できない、それでつい難しく書いてしまう。誤解が無いようにと思えば思うほど遠回しの表現となり、ストレートに欠けない、それで私自身も苛立ってしまう、それがこのテーマに関してずっと抱いているジレンマです。
言いたかったことは二つ。
その一つ目・・・・懇意の者同士とか、同業者で寄り集まると、大きな視野でモノが見えなくなってしまうことが多々ある。人との関係が親しくなればなるほどその関係を正常に保つのに苦心するということ。
二つ目は・・・・・これが結構難しいのですが。
仕事を一緒にする時など、人と話をする時は出来る限りお互いの共通項だけで話をしないということ。
愚痴の言い合いや、はけ口や、結局自己満足に陥ることが多い上に、自分たちの都合のよいものばかりに落ちつき、本質を見失ってしまうことになることが多いです。
私が気をつけている点、それは話をする場合、私と相手の方、その両者を超えたところで話をするよう務めていることです。
お互いの価値の基準を超えるところを探そうとしているのだと思います。
自分たちを超えるものに価値の基準を置きたいのですね。

前回書きました同業の「演奏家」「マネジメント」「ホールスタッフ」「評論家」といった方とのお話は、現実の「不満」や「要求」の話ではなく、どうすれば最良のものが作れるか、未来に向かってどうしていけば良いものが残せるか、その視点で話をしたいと思うのですね。
そのことがはっきりすれば何をどう対処していけば良いかが視野に入ってくると思うのです。
人はやはり現実のことに目を向けがちです。しかし現実にこだわればこだわるほど現実に縛られていく。これって難儀ですね。

芸術は現実に根ざしながら未来へと想いを馳せることのできる行為です。
このバランスが絶妙なのです。
私がもっとも大切に思っているもの、それはこの二つなんです、と言いたかったわけです。

前回はちょっと挑発的なニュアンスの上に、小難しく書いてしまいました。
沢山の人との素晴らしい出会いがあるのですね。
これからも素敵な出会いを求めて、歩んでいきたいと思います。