第17回('97/1/26)

「評価」

「柴田南雄・その響きI」に引き続いてリリースした「柴田南雄・その響きII」も好評だそうです。とても嬉しく思っています。
今月の「レコード芸術誌」の現代曲部門で特選盤に選ばれています。
これをきっかけにして、多くの方々に柴田作品を聴いていただくことになればと思います。
この特選盤推薦の評に以下のことが記されていました。

「・・・・・これまでこの作品の演奏は、初演者である田中信昭指揮の演奏が最も秀れていた。しかし今回の大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団による演奏は、それに劣らぬ名演である。この作品における音現象の順序は指揮者に委ねられており、当間修一の指揮はこれまでとは異なった仕方でこの音楽を組み立てているが、それは<追分節考>に新たな光を当てた名演となっている。この作品は、演奏ごとに新たな発見のある作品であり、当間の指揮はそれを見事に証明してみせた。また<宇宙について>の演奏も見事というほかない。・・・・・」(佐野光司氏)

「・・・・柴田南雄という作曲家は、自作の演奏について、各々の演奏家の様式と思想を最大限に尊重する音楽家であったと思う。その柴田が敬愛し尊敬する指揮者の当間修一に、1994年7月、次のような書簡を送っているという。「<自然について>のテープ先日お送り下さりありがとう存じまいした。じつにレヴェルのたかい演奏で、感嘆しました。何日もききました。自分が想像した響きにはじめて出会った、あるいはそれ以上のものを聞いた、というのが実感です。」
当間修一指揮のこのCDは、清澄でしかも深い立体的な声の音響を作りだし、その精緻で透明な声の音響は、人間と自然と宇宙、光と生命、闇と死の意味について、優しくしかも鋭いメッセージを伝えるのである。」(船山 隆氏)

本当に嬉しい限りです。柴田作品の演奏は、私にとっても、そして合唱団の一人一人にとっても「音楽する心と向き合う」こととの出会いでした
柴田先生の理想に近づきたい、その思いの結果がこのような評を頂く結果となったのなら、演奏家としてとても光栄ですし、今後の励みともなります。

私たちの活動は今年22年目を迎えるのですが、ここ大阪ではなかなか評価をしていただくことができませんでした。
振り返るに、私たちの演奏にいち早く反応して下さって、評価していただいたのはドイツの方でした。(その方には現在、我々のドイツの演奏旅行の最高責任者となっていただいています)
その次に評価をして下さったのは、ドイツの音楽評論家の方々。
そして我が国で最初に私たちの演奏に注目してくださったのは音楽学者の礒山 雅氏でした。(礒山先生がホームページを開かれています。ここをクリックしてください。
地元大阪での評価はその後頂けるようになったのではないでしょうか。

評価することの難しさは、その対象が近ければ近いほど困難になっていくのでしょうか?
私たちの評価がドイツから始まったのが皮肉なことだと思っています。
一般論としての話、何かに対して評価することはホントに難しいことですし、勇気のいることですね。
自分の趣味・嗜好に走りがちになると思うのですが、価値観を広げ、より広い視野に立って判断することはそう容易なことではありません。
歴史的な視野のもと、深い教養と知識と感性に基づいた評価を日常的に私たちは求められています。
自らにとっても、相手にとっても大切となる評価を与えられたり、与えたりしなければならないのは憂鬱にもなりますが、これ無しではまた刺激も無いということになります。

いま、大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団ではオーディションが行われています(1月25日、26日の二日間)。(この関連記事が私個人のホームページ、「日記」のページに掲載しています。ここをクリックしてください。
私とそして「声楽アンサンブル」のメンバーが、オーディションを受けに来た人達に対して評価を与えています。
判断を誤らないよう、狭い価値観に陥らないように、という苦渋をいま味わっているところです。

追記
大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団が大阪府から96年度「大阪文化祭賞・奨励賞」を頂くことになりました。本当にありがとうございました。