第18回('97/2/8)

武満 徹のCDに向けて

日本を代表する作曲家、武満徹氏が亡くなられて早一年が経とうとしています。
氏の作品は今も世界で演奏され、今月などは追悼記念の演奏会が至る所で行われていることでしょう。

今、私たちは氏の合唱曲、「風の馬」と「うた」のCDを世に送り出す作業を急いでいます。
氏に是非聴いて頂きたいと願ってCD化のための演奏会の計画を立てたのは、一昨年の事でした。
しかし、それは叶いませんでした。
ドイツで演奏した「風の馬」、そして少しずつ演奏会にかけていた「うた」。
その区切りとして、是非氏に聴いていただきたかったのですが・・・・・。

「風の馬」は音程の難しさ、リズムの難しさと共に、ハーモニーの色をつけるのが困難な曲です。
暗く重たい音色ではなく、明るく軽やかな「風の馬」を一度演奏しておきたいとの思いでした。

「うた」はどちらかというとポピュラーに近い雰囲気を持っているためか、イージーな感覚に成りがちです。
しかし、そこで使われているハーモニーはそう簡単に歌えるような音の重なりでは決してありません。
音程とハーモニーをできるだけ忠実に、そして各声部のバランスを歌い手自らがコントロールできるような演奏をと、このCDでは意図しています。

氏が書き残された数少ない声楽曲。
武満夫人が書き送ってくださったエッセイの中に、氏がいかに<歌>うことに繊細にして研ぎ澄まされた感覚を持っておられたかを書き記されています。
氏が描いておられたイメージ。近づけられていたらよいのですが。

CDは3月にリリースする予定です。