第22回('97/4/7)

チョット言いにくい話なんですが・・・・・・(第二話)

プロと呼ばれている人の中には、駆け出しもいれば達人もいますよね。
今日は第二話として、プロの中でも感心しない人たちの話を取り上げます。
前回に言ったように、ここでのメインは<アマチュア音楽家>を取り上げようとしているのですが、<アマチュア>を批判するのは実はとても勇気がいるんです。
恐いんですね。にらまれたらホントに恐いですね
そこでクッションの意味も込めてプロの話を先にします。
プロだと「恐くないのか?」と問われそうですね。そうなんです、余り恐くはないんです。上手くいかなかったら仕事を一緒にしなければいいわけですから。またそうならないように真剣にお互いが歩み寄っていくものですから、とても建設的になる場合が多いんですね。

私のチョット苦い体験を告白してこの話を進めましょうか。
私が学校回りのオーケストラの棒を振っていた頃のことなんです。
主宰をしておられた方から「つぎは・・・の曲をするのでよろしくね」と言い渡されたんですね。これは「勉強しておいてね」ということです。
仕事場にはスコアが用意されています。(自分のを使いたいのですが、用意されているスコアには書き込みがいっぱいしてあるものですから、自分のだと用をなさないんです。)現場にいった時はこの曲は<すでに熟知してますよ>という顔をして振らなければいけないものですから、パラパラとページをめくって準備はOK(という演技をしますね)。しかし、実は徹夜でスコアを勉強してました。
準備は涙ぐましいものなんです。
勿論、自分用のスコアを購入しますね。それに違うタイプの演奏家によるCDを2〜3枚買い込んで聞き込みます。普通はこれで事足るのですが、もう少し複雑なものになるとその背景を知るために参考書を購入します。この類の本は高価なんです。ですから出演料はこれらのもので飛んでいってしまいます。足を出すこともしばしばでしたね。
しかし、不満に思ったことはなかったですね。全部自分に身に付くことになるわけですから。
それがですね、ある時期からこの勉強をしなくなったんです。その原因はきっと<慣れ>と<間違ったプロ意識>が芽生えていたのだと思いますね。
その時もスコアは用意されているものと思って出掛けました。すでに相当のキャリアを踏んでいたものですから演奏の前の2〜30分で何とかなるだろうと思っていたんですね。
ところが行ってみるとですね。今思い出しても恐ろしくなるのですが、スコアは無いというのです。新しく演奏するわけなんだから、オーケストラ側で揃えておくのは当然だと私は思っていたわけです。ところが、その時に限って私のスコアを使って振らなければだめだろうと、つまり私が最初に振るわけだから自分のスコアを用意してくるものだと思われていたんですね。
今までと「違うではないか」と思っても仕方ないですね。よく考えるとこれが当たり前のことですよね。
スコアの有無を確かめなかった私が悪かったのですから・・・・・。

プロとは影で努力しなければならないことが多いんですよ。
ところが、最近出会う器楽奏者の中に、驚いてしまう人に出会うことが多いんです。
演奏を頼むとですね。「パート譜を下さい」、「CDからダビングしたものを送って下さい」とくるわけです。「パート譜」はまあ良いですね。でも有名なものは揃えていてもいいんじゃないかな。これは「スコアのコピーが欲しいんです」とくれば、手間はかかるのですが送ってしまいますね。この人は本当の準備をしようとしていてくれると思うからです。しかし、これも何処にでもある有名な曲なら自分で購入すべきですよね。ビックリするのは「CDからダビングしたテープを下さい」といってくる人です。これって私の今までの体験ではなかったことですから。
因みに私の気に入った演奏をしてくれる奏者にはこういう人はいません。
事前にCDを買って聴き、スコアも買って全体を見ようとしていますし、パート譜もスコアがありますから無理に取り寄せる必要もないわけです。
練習の時に書き込みが変わる可能性もあるんですものね。

プロにはプロのメンツがあっていいと思うんです。しかしそのためには目に見えない準備がいつも必要だと思うんですね。
プロと呼ばれている人たちにもプロに徹することのできない人がまだまだ多いということなんです。

次回は予定変更は無く<アマチュア演奏家>の例を書きます。