第29回('97/11/1)

「合唱」

街の中でイヤーフォンを耳につけ、音楽らしきものを聴いている若者をよく見かけます。
聴いているのは音楽だけではないでしょうが、口ずさみながら通り過ぎるのを見たり、足や指でリズムを刻んでいるのはやはり英会話などではないですよね。
その若者が合唱を聴きにコンサートホールに来てくれればいいなぁとよく思うんです。

普通世間でいう「音楽」にはクラシックは入っていないんですか?
タクシーや居酒屋さんなどと話をするとき、私には「クラシック」も入っているのですが、相手をしていただいている運転手さんやお客さんの頭には「クラシック」は入っていないんですね。
これで随分ちぐはぐな、そして気まずい思いをしたことがあります。
最近は私も解ってきましたから、話を合わせて「クラシック」を除いて話をすることが多いですが。
私のことを知って、いきなりBGMがクラシック系になったときなど、どうしようかと思いますね。
それほどに世間では「クラシック」は別世界のものなんですね。

先日来からの合唱コンクールの審査の経験は、私にとって「合唱」について考える良い機会を与えてもらいました。
上にも書いたように、音楽好きの街の若者が合唱に興味を持ってコンサートに来てくれたら、と想像するのは楽しいことです。
きっと活気ある、盛り上がるコンサートになることでしょう。

今回審査しての感想は、以前に比べて衰退している「合唱」でした。
その中にあって希望を持たせてくれたのは「中学・高校」の演奏でしたね。
聴いていても楽しかったです。
その他の部門は正直言って、ちょっと辛いものがありました。
ここに例の街の若者がいたらどう反応するだろうかと考えるのは楽しかったです。
その若者達が合唱を「けっこう面白い」となればいいのですが。
「子供も、若者も、大人も全ての世代で聴いて楽しむ」、これが私の提唱する「合唱」です。
聴いて楽しいものでなければ。そう思いません?

提案です。合唱のサウンドを、
スマートなサウンドにしませんか?
中途半端で旧態依然とした「密閉」されたような「混沌」としたサウンドなんかじゃないオープンなサウンドにしませんか?

でも言うは易し、実際は難しいですね。
そこで合唱というものに立ち返って、何が基本なのだろうかと考えるんです。
結局「音」の楽しみ、「音の不思議」ということだと思うんですね。
音を追求することが「面白い」、ということになればいいんです。

「倍音によるハーモニー」
「自然に共鳴するハーモニー」
「自然と軋む(きしむ)」ハーモニーを体験しませんか?
そしてそのハーモニーを使って、
徹底して、聴いて楽しい合唱音楽を作りませんか。
歌う楽しみだけではなく「聴いて楽しい」サウンドを作りませんか。
それがこの衰退を防ぐきっかけになると思うんです。

私が合唱を知った時代は盛り上がっていました。
合唱人口も多かったですね。
合唱が楽しくて面白いという人が沢山現れてきて欲しいです。

第29回「合唱」この項終わり。