第55回('00/3/23)

倉敷音楽祭

倉敷音楽祭に参加しました。
2000人収容の市民会館での公演でした。

音楽祭での公演の話は随分前からあった話です。
しかし、毎年見送りになっていました。
こちらも、「やってみたい」とは言っていたものの、事情も解っていたことですから「うまく機会が訪れるといいね」とのんきに構えていました。
音楽祭を担当されていた方が、何度も足を運び、我々の演奏を大阪で聴いていただいての話だったのですが、それから時間が経ってしまっていました。
すでにその方がすでに他の部署に変わられてからの今回の話となり、そのことが少し残念でした。
ウワサというか、評判は岡山にも伝わっていたそうですが、演奏やその中身についてはまだまだ一般的には知られていなかったと思いますね。
2000人のホールにいったい何人のお客さんが集まることやら。
我々は公演が近づくたびに心配になっていきました。

主催者側に訪ねても色好い返事が返ってこず(おおらかではありましたが)、こちらがヤキモキする日々が続くんですね。
初めて聞いていただく土地ということもあって、何とかたくさんお客さんに入ってもらいたいなと思います。
で、こちらから岡山へ宣伝しに行くことにしました。
担当の小野がたまたま岡山出身ということもあって、積極的にアピールしようということになったんです。

結果、ラジオ、FM、テレビ、そして新聞と取り上げていただき、短い時間だったりしたようでしたが、電波に乗りました。また記事にもなったようです。(結構沢山取り上げていただきました)
地元の方とお話をすると、「シュッツの名はまだ一般的にはしられていないんですよ」と言われてしまいます。(まったく、そのとおりではありますね。こういうときは辛いですね)
でも、聴いていただくと納得していただける、あるいは満足していただける、と今までの経験から自信があるのですが、でも、それにしてもまずは来ていただかなくてはなりませんし、聴いて頂かなくてはなりません。

当日、大阪からのお客様も含め、私たちの関係者170名ほどの方々が聴きに来てくださいました。
もう大感激です。
その他、聞くところによると、遠く他県からもわざわざ来ていただいていたようなんです。
CDを聞いて覚えていてくださったり、「これを聴かなければ」といって友達を誘って連れてきていただいてたり、感謝です。
少しずつではありますが、広がっていっているという実感です。

地元の方も当日は沢山来ていただきました。
このホール、前日の公演が「ウルフルズ」。ダフ屋も出て、賑わっていたそうです。
さて、我々の時にはどのぐらい入るものか。
ふたを開けると、開演前には長蛇の列(そう、Mailなどでは表現されていました)。そして、ホールのスタッフや、音楽祭関係者の方々は、その状態や客席を見て「うわ〜。入りましたね」というお言葉でした。
結果は530名ほどのお客さん。

演奏の前半、ホールの空気は重かったですね。
客席から入場のグレゴリオ聖歌(やはり、みなさんこれには度肝を抜かれたようです)、小アンサンブル(アウローラ・ムジカーレ)のルネッサンス宗教合唱曲、シュッツの作品、そしてバッハの器楽曲とモテト。
特にバッハの前まではお客さんも「さぁ、寝ようか」といった状態(これもMailで教えていただきました)。いつも聴き慣れている音楽、といった調子でお聴きになっていたようです。(私としては、どれも満足できるアンサンブルでした)
しかし、曲が進むごとに例によってお客さんの表情が変わっていきます。視線が熱くなっていきます。
バッハの演奏が終わったときはみなさんただただ驚いている、といった雰囲気でした。
モテットの演奏は最近にない熱い演奏となりました。私の意図するモテットへと一歩も二歩も近づいた演奏だったと思っています。
この曲(モテット一番)、評がいつも私が思ったよりも辛くなるんです。(早すぎる。二重合唱のため声量が落ち、インパクトが薄くなる、といった評が多いですね)
実はこの曲、聞き手の精神状態がもろに出てしまう曲ではないかと思っています。少し、不運な面を持ち合わせているのではないか、などと私の演奏解釈を棚に上げて思ってしまうんです。
合唱団の演奏、それは少し乱れたところがあったとはいえ、久しぶりの快演だったと思っています。

後半のペルトに少し心配をした私です。どう受け取っていただけるか。
心配することはありませんでした。
いつのまにか気になり始めていた、客席の前に座ってらっしゃっていたおばあちゃん
この方が満足そうな拍手を送って下さいます。(このおばあちゃん、連れの方と曲が進むごとに拍手が大きくなっていきます。最後はもう立ち上がらんとばかりの大拍手でした)
後、会場の空気は熱をおび、三善 晃の「地球へのバラード」、柴田の「追分節考」と進んでいきます。

今、ぞくぞくとMailや聞き伝えで感想が入ってきています。
多くの方の感嘆の言葉を聞かせていただいています。
大阪まで聴きに来たいといった方もいらっしゃるそうです。

2000人のホールでの530人。
しかし、関係者の「今日は多いなぁ」という言葉がささやかれた演奏会だったそうです。
多くの方に音楽の魅力を知っていただきたい。そう思ってきた活動です。
2000人のホールを満杯にしたいですね。
そして今回のように、会場には笑顔があり、曲が終わるごとにリアクションがあり、最後にはスタンディング・オーベーションで気分が高揚して終わる。そんなプログラムを組んでみたいですね。
それには、クラシックのあり方を考え直さなければならないと思っています。そして、私の活動はその実践だと思っています。

演奏会が終わったあと、ロビーでは私たちのCD、MDおよびテープ売り場に多くの方が殺到され、担当者は嬉しい悲鳴をあげていたと聞いています。
私たちの活動はライブに重点を置いているのですが、そういった音源が起因となって会場に来ていただければうれしいです。

去年より楽しみとなっていた、国内で初めての他県公演(東京公演を除く)が終わりました。
またまたクラシック界の音楽事情も垣間見た公演ではありましたが、これから少しでも多くの方に私たちの演奏を聴いていただけるよう活動を続けたいと思っています。

第55回「倉敷音楽祭」この項終わり。