第59回('00/7/11)

合唱団での出会い

「合唱団を辞めていただきましょう」

というセリフを言ったのは、この25年の間に4〜5回でしょうか。
これは直接本人に申し上げました。

団員からの「○○さんは辞めてもらったらどうですか」という個人的な意見は断固として受け入れませんでした。
しかし、苦渋を味わいながら辞めていただいた経験が4〜5回もあるんです。

様々な個性の集まりが合唱団です。
大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団(今年10月から、「大阪コレギウム・ムジクム合唱団」と改名する予定。以下、省略名のOCM合唱団と記します)は、「どなたでも入っていただけます」という看板を掲げて門を開けていますから、人生の経験や、音楽経験においても千差万別な出会いに依っているというのが前提となります。
合唱団での出会いが、共同での「音楽作り」の出発点です。
<新しい響><新しい音楽の作り>を目指す合唱団ですから、前例がありません。自らによって築いていかなければならないという方向性を持った合唱団です。
合唱団の練習そのものが、個人的な訓練の場、未知なるものとの出会いの場となる性質を持っています。

(一方、演奏会での核となるオーディションを経て選ばれる「室内合唱団」員は、訓練を経て、音楽作りに書かせない<アンサンブル力>を試されての選出ですから、共同体としての音楽作りに専念出来る状態が既に揃ったところからの練習が可能です。)

新しい出会いは比較的多くOCM合唱団で起こります。新入団員です。
楽しいですね。新しい出会いは。
どんな個性と出会うか、それこそ少し緊張感を伴っていますが、気持ちはいつもニュートラル(車のギヤの)状態。
不幸にして全体との折り合いが悪く、「別れ」も生じてしまったこともありますが(前述の「合唱団を辞めていただきましょう」です)、理解し合えなかった、その事は今でも胸が痛みます。
しかし、多くの方々とは素敵な出会いがありました。現在も団員として活動している方々は勿論として、都合によって(転勤が多いですね)団を離れなければならなくなった人たちとの出会いも、合唱団にとって大いなる貢献をしていただいたと感謝するばかりです。

「経験」は積み重ねてその大きな意味を持ちます。
「経験」は<合唱団>を、<合唱団作り>を堅固にします。
新入団員には、今まで合唱団が経験を通して培ってきたことを身につけて頂くために、「経験の場」の繰り返し、「テクニックや様々なノウハウ」の反復といったことが欠かせません
団が歩んだ感動としての足跡を後進に伝えながら、新しい次のステップへと全体を進めていく、この同時進行が合唱団の健康を保つ上で不可欠な要素です。

「合唱団での出会い」が、個人の世界を広げる役割をも持つ、そういった「場」としたいです。
そして、聴衆との間においてもこの関係が成り立てば、より広い意味での素晴らしい出会いが待っていると信じます。

一歩一歩新しい世界へと踏みしめていく「歩み」、その一歩一歩は過去の経験を積み重ねた重みでありたい、そう私は思っています。

第59回「合唱団での出会い」この項終わり。