第81回('02/12/27)

合唱団の忙しさ

2002年の最後の演奏会(12月23日ルーテル大阪教会【クリスマス・コンサート】)が終わり一年を振り返ります。
今年も合唱団にとっては忙しい一年となりました。
プログラム、スケジュールとも過密です。
それゆえ、過密の忙しさは、活動そのものの楽しさや演奏の充実感を感じることなく、時間がただ費やされていくという危険性も併せ持っています。

初心者から合唱のベテランまでを含む我が団の活動は、日本において希有の存在だと思っています。
特に、「大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団」の活動は特筆に値するといってよいものだと思います。
毎月の「マンスリー・コンサート」、年数回の定期公演だけでも忙しいのですが、団員には関連団体で活動してもらっている者もいますからその人たちのスケジュールの過密さは相当のものです。(これがまた結構たくさんいるんです)
「演奏回数」「レパートリー」ともその多さは並ではありません。
すでにこれは、「音楽活動が生活」状態ですね。

職業として成り立つ合唱団は残念ながら我が国では存在しにくい状態です。
組織としては「プロ」の活動とあっても、数十人という合唱団員全員一人一人の収入を「世間並み」に得ることはとても不可能です。
「二足のわらじ」を履いての活動は想像を超えて過酷な状態だといっていいでしょう。(それを支えているのは音楽の持つ<楽しさ>、音楽に対する<情熱>ということですね)

<情熱>を生み出す底にあるもの、それは
我が国での「音楽とは何か?」「活動の意味、意義とは?」という大きな問題に突き当たります。
しかし、そのような重苦しくなるテーマと出会っても、我が団には現実の厚い壁をも砕いていこうとする<音楽するパワー>が何故か溢れてきます。(笑)
<使命感>というようなものではないでしょう。(そういうのは嫌いです!いや、そういう考えは危険だと思っています)
ただ、<せずにはいられない気持>がそうさせている、<歌は私>、<歌が好き><ハモらせるの大好き>といった感覚に近いです。(ちょっと恥ずかしいほどの「青春編」ですね(笑))
そしてそれらは行き着くところ、「歌うこと」を通して<人と出会いたい>ということなんじゃないかと思います。
これは真に、「コミュニケーション」の手段としての行為だと思うのです。

「音楽」を通して<コミュニケート>したい、自分との<対話>でもありたい、人と繋がりたい、これが私の情熱の底にあるもの、そして合唱団の<活動の根っこ>です。

【OCM合唱団】
初心者でもどうぞと謳っています。そのため年齢、経験の違いによる層は厚いですね。
とにかく「合唱とは?」というところから説いていかなくてはなりません。(笑)
理屈ではなく、説明だけではなく、体験として「合唱の面白さ」「合唱の難しさ」を味わっていただこうというわけです。
それから大事なことなのですが、<コミュニケート>したい私にとっては私も含めた団員同士の<コミュニケーション>も図りたいんですね。
一人一人の「顔」、「個性」と対面したいんです。(「おいやでなかったら」ということですが(笑)) 色々な分野の専門家やその<卵>が集まっています。得意技をお持ちの方もいます。(笑)
とにかくこれを発揮して頂かなくてはなりますまい(笑)、ということの結果で・・・・我が団では自前で何でもやっていこういう伝統ができあがりました。(笑)
チラシ、CD制作、衣装、演出、そしてコンピュータ活用、殆どが自前でできてしまいます。
(もちろん、外部への依頼はスタッフの刺激、技術向上へと繋がりますから発注することは怠りません(笑))

週一回の練習日、それに演奏会(OCM合唱団の出演は年二回、および三回ぐらい)近くになるとその演奏会のための臨時練習が入ってきます。(回数が決まっていませんが週に一度か二度ぐらいでしょうか?それに日曜日なども練習入りますね)
有料での演奏会を開いている合唱団としての練習量としては決して多くはないと私は思っているのですが(逆に、もう少し楽しい音楽作りということで、私の練習の機会を増やしたいほどです)、それでも中には多いと感じる人がいると聞きます。(臨時練習が急に入ってくるっていうのがいけないのかなぁ(笑))

とにかく、「合唱を楽しむイ・ロ・ハ」を伝授することが最優先。
「合唱って思っていたより難しいけれど、これって楽しい」となれば大成功です。(笑)
しかし(ニコニコ)、今年の「OCM合唱団」はもうそんな段階ではなくなっていました。
音楽する意識も、ハモリも立派なものです。
これじゃぁ、初心者が入って来にくくなるではないですか(笑)
ちょっと贅沢な心配です。

【室内合唱団】

年始めに行われる「オーディション」合格者によって組織された合唱団です。
この中にはソリストによる「声楽アンサンブル」、私の人選による「アウローラ・ムジカーレ」も含まれます。
現在は殆どが「OCM合唱団」からの合格者、あるいは人選になっています。
外部の方にも入っていただきたく門は広く開いているのですが、実際「声楽アンサンブル」の「オーディション」を通して合格される方は少ないですね。(合格していただける方をお待ちしています)

この「室内合唱団」が実に忙しいです。
週一回の練習日ということになっているのですが、いわゆる人々が想像する「プロ」より練習をしているのではないか、いや絶対そうだ、と思われている団員たちです(笑)。そんなわけないですよね。
時期にも、人にもよりますが(笑)、週のうち、声を出していない日のほうが少ないでしょうね。
私は「少なくして!」と懇願するのですが(笑)、なかなか言うことを聞いてくれません。(笑)
ここまで練習をされると「練習することでの弊害」を真剣に心配しなければならなくなります。(笑)

一人一人の限界に挑戦する世界ですね。
自分の能力、才能といったものを知らしめられる世界でもあります。
音楽との対峙の世界を経験する。我が国の文化と直面する。これが「大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団」ということになります。
我が国の芸術活動、文化活動の先端を走っている演奏の一つだと自負していいかと思っています。
それだけに、困難に直面する機会も独走状態です。(笑)
しかしそうであっても、<音楽する楽しさ>を基調とした活動は貫きたいですね。
「何のために音楽するか?」
「楽しいからです!」
そう言える活動でありたいです。

合唱の難しさは「声楽のテクニック」のそれではありません。
<自分自身以外の「個性」とどう協和させるか>にあります。
自分の個性を形成させながら(これがとても大切です)、他と協和する難しさ、これがハーモニーの世界です。
その実践が「室内合唱団」の活動といってよいかと思います。

来年も「忙しさ」は続きそうです。
しかし、楽しさの無い「忙しさ」はしたくありません。
「しかたなく」とか、「なんとなく」とか、更に「忍耐」「使命」とかいったことからは程遠いものでありたいと思っています。
歌っている者が一番「輝いている」、そんな合唱団がいいんです。

第81回('02/12/27)「合唱団の忙しさ」この項終わり。


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