1999/6/24
<「初めてのオケあわせ」>

(今回の担当:TEN.鳥海治房)

6月20日。現代音楽シリーズ「プーランク」のためのオケあわせが始まりました。
団員みんなにとって、今回の演奏会向けの初めてのオケあわせですが、
と同時に、僕にとっては、シュッツ合唱団での初めてのオケあわせでもあるのでした。

月日の流れは早いものです。「四季」の演奏会を聴きに行って愕然としたのは、
今から2ヶ月前のことでした。
実は、それまで、シュッツ合唱団(全体)の演奏会を聴きに行ったことはなかったの ですが、数年前に一回だけ室内合唱団の演奏会を聴きに行った際の印象(今にして思 えば、当時の僕の耳の理解力が、いかに貧弱だったことか・・・)や、周囲の評判か ら、漠然としたイメージは心の中に描いていました。
シュッツ合唱団の音楽は、「上手い!」の一言につきる・・・。
これが、僕が持っていた、間違ったイメージでした(で、ただ上手なだけの演奏なら、わざわざ足を運ぶ意味はない、と考えていたわけですね。うーん、何て生意気なやつ!)。
しかし、実際に生で聴いてみると・・・。
その音楽は、「上手」という言葉が包括している枠を大きく超えており、言葉になら ない感動が次々と僕の胸に去来するのでした。そして、僕の心に訪れた、「これが本 当の合唱なのだ!」という光と、「では、今までやってきたのは何だったのだ?」と いう闇。
そんな僕の目に飛び込んできたのが、「団員募集中」という、一枚のビラ。
それまで長い間、雲の上の存在であったシュッツ合唱団。そんなところに「入団しよう」という気持ちが芽生えたのは、この瞬間でした。
「僕の技術力で果たしてついていけるだろうか?」を筆頭に、様々な逡巡の想いが浮 かびました。しかし、「最初は下手でも、この合唱団で歌っていけば、いつかは上手 くなれる」という、根拠のない自信(?)や、「僕が、ここまで混声合唱団に惚れ込 むなんて、自分でも驚きだ(実は僕は混声合唱よりも男声合唱の方が好きなのです、 理屈抜きに)。でも、タイプじゃないものに惚れる気持ちこそ、本物だ。どんなに練 習が厳しかろうと、僕は頑張り続けるだろう」という見通し、さらに、周囲の友人の 応援(?)もあって・・・。結局、24時間もたたないうちに、「入団したい!」とい う連絡を取り、水曜日には、見学者のくせして、すでに練習に参加していたのでした。

(さて、タイトルが示している内容からは完全に逸脱してしまいましたが、もう少し お許し下さい)

「四季」の演奏会を聴いて、僕があんな気持ち(上述)になったわけも、今になって みると、だんだんわかってきました。
・・・僕は大学のサークルで合唱を始めた人間ですが、2、3年、大学の合唱団2つを かけもちしていた時期がありました(うちの大学には、合唱団がいくつもあったので )。一口に「合唱」といっても、いろいろな方向性があるので、その両団の音楽も、 大きく異なっていました。その後、片方にしか行かなくなりましたが、満たされない 想いは、ずっと続いていました。「両方の長所を合わせ持った合唱団があったら、理 想の合唱団なのになあ。どっかにないかなあ」。
しかし、そんな気持ちも、心の引き出しの奥深くに押し込められて、ほとんど忘れて しまっていたのですが・・・。最近になって、シュッツ合唱団に入団して練習に参加 しているうちに、ふと、気がつきました、「あ、ここは、僕が求めていた理想の合唱 団だ。いや、それを越えている」と。僕が求めていた方向性があるばかりか、シュッ ツ合唱団で歌っていると、僕が音楽的に未熟者であるがゆえに今まで感じたこともな かった、いくつもの音楽性があることを思い知らされます。
・・・理想を越えた合唱団だったわけですから、演奏を聴いて、いろいろ考えさせら れたり、感動したりしたのも、当たり前だったわけです(上述の心の闇も、すうっと 消えていきました)。

(で、言いたいことを言い終わったので(なんてわがままな!)、そろそろ本題に戻 ります)

そんなこんなで(どんなんや?これでは全然わからん)、オケなしでの2ヶ月間の練 習を経て、ようやくオケあわせ。どんな曲でも、オケがつくまでは片翼飛行みたいな ものですから、この日を楽しみにしていました。で、期待通りに楽しい練習だったわ けですが、驚いたことが一つ。
これまで僕が他のところで経験してきたオケあわせは、あくまでも「合唱団の」練習 のためのものだったのですが、シュッツでは違う!オケのみの練習の時間が、結構あ るのです!こんなことを書くと、合唱経験のある読者の中には、「え?じゃあ、歌う 時間は少ないんだ。つまんなそう・・・」と思う人もいるかもしれませんが、そんな ことはありません。聴いてるだけでも、楽しい、楽しい。ほら、合唱(だけ)の練習 でも、全体の練習時間中に、どこかのパートだけ取り出して練習することもあります よね?その際、聴いていると、いろいろと面白いこともあるでしょう、それと同じで す。で、「それと同じ」であるからには、楽しいだけでなく、さらに・・・。
普段、漠然と伴奏として聴いていると、目立つ部分の楽器は聴きやすく、目立たない 部分の楽器は聴きにくいもの。しかし、弦だけの練習、管だけの練習を聴くと、目立 たない部分の楽器も、比較的よく聴くことができます。一回、そうやって自分の中に インプットされれば、無意識ではあっても、全体を聴きやすくなります。で、その状 態で歌えば、さっきまでよりも、なお、楽しい。というより、それができてはじめて 、作曲者が意図した音楽に近づくことができるんでしょうね(だから、これは、やら なければならないことなのでしょう)。
と、同時に、ふっと胸をよぎった想い・・・。
「今まで(他の合唱団で歌っていたころは)、こんなふうにオケ全体を聴くことなんて、全くできてなかったなあ。高いお金を払って(オケ伴がつくとお金がかかることが多い)、もったいないことをしてきたなあ・・・・」。


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