2003/9/22
<みなまた 〜川の出会うところ〜>

(今回の担当:コレ・マガ編集委員 AIT. 鈴川寿代)

川の出会うところ〜という意味の「水俣(みなまた)」。
海・川に恵まれた、鹿児島県との県境に位置する熊本県の土地。
柴田南雄氏は楽譜の冒頭で「目の前に広がる不知火の海に点々と浮かぶ小島や彼方の天草の山々を眺め、その美しさに感動した。」と記しています。

9/27の「邦人曲シリーズ」で演奏します柴田南雄作曲「みなまた」は、3部構成になっており、以前にコレ・マガでもご紹介しましたように、1部は水俣の美しさが主題、2部は民謡を、3部は淵上毛銭の詩を用いて、公害による歴史的苦悩を織り込みつつ、柴田氏自身が感動したその美しさと人々の脈々たる生活がシアター・ピースで見事に表現されています。

3部の淵上毛銭の詩は「散策」「無門」「河童〔がらっぱ〕」「約束」の4編です。この中でシアター・ピース色が濃く作曲されているのは、「河童〔がらっぱ〕」でしょう。

"河童〔がらっぱ〕がおるち うそじやろない/おらじやま おつたとたい
去年も誰〔だっ〕てろさんが/がらつぱに尻かかじられて/うんぶくれたがね
・・・・"

方言をまじえたお話。
『河童がいるんだよ、うそじゃない、いたんだよ。』といい、河童のせいでおぼれただの、河童の皿を拾っただの、と河童伝説を語ります。

河童(かっぱ)は想像上の動物。北海道から沖縄まで日本全国の川のある所に、かっぱに関する言い伝えがあり、水俣市にもかっぱにまつわる様々な話が伝わっているようです。水俣出身の淵上毛銭にとっても「がらっぱ」は幼い頃からの身近な存在だったように思われます。

この詩を柴田南雄氏は「朗読」と指定しています。
そして、その朗読の後ろで、また間を埋めるように、前奏・後奏・場面転換として、合唱による和音が印象的に響くように設計されています。
朗読と和音。そのバランスで、河童のおどけた姿が見え隠れするようです。

また「みなまた」におけるシアター・ピースの聴き所は、2部の民謡です。
柴田南雄氏は「4種の民謡旋律によるコラージュで、それぞれ高声と低声に分かれる。全体はその場指揮者が即興的に構成していく。」としています。
奏者は舞台にとどまらず、会場にも配置されるかもしれません。お客様の側で歌うこともあるかもしれません。
以前シアター・ピースを体験された方から「音の渦に巻き込まれていく感じ」と感想を聞いたことがあります。2部では、民謡の響きがどのように重なっていくのでしょう?!

シアター・ピースのライブでは、瞬間瞬間でその時にしかない音楽が生まれていきます。それを十分に味わうにはその場でその空気を奏者と一緒に体感するのが一番です。醍醐味を是非お楽しみ下さい。

(「大阪コレギウム・ムジクム メールマガジンNO.104 2003.9.19発行」より転載致しました)


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