No.370 '01/6/13

現代音楽シリーズへのお誘い


6月24日(日)「現代音楽シリーズ Vol.12」です。
ちょっと私自身が<はまってしまった>作品を今回選びました。
間宮芳生、藤家渓子、木下牧子氏の作品です。

クラシックの名曲を演奏することと、現代の作品を演奏することとは演奏家にとって魅力あるプログラミングです。
とくに現代音楽を演奏する時、創造的な仕事としてはこれほど充実感の持てるものはありません。
まさに「現代」を表現できるからです。
しかし、「難」がありますね。
それは作品が知られていない、ということ。(当たり前ですね(笑))
聴衆が前もってイメージできないというのがどうもネックらしいです。

間宮芳生:合唱のためのコンポジション第5番「鳥獣戯画」、これはもう文句なしに聴いて楽しい曲だと思うんですね。
元は、1966年12月31日に公開された(制作は春)記録映画のために作曲されたもの。(イタリアの映画祭で金賞を獲得)
その後改作を経て演奏会用作品となりました。
平安末期から鎌倉前期にかけて描かれた当時の世相を皮肉った風刺画だと言われている絵巻「鳥獣戯画」。
描かれている<読経する猿の真面目な顔>が滑稽(こっけい)です。
それに対応するかのように作られた曲は(作曲家によれば対応していない部分もあるということですが)、お経あり、当時の労働描写あり、男女の卑猥部分もあり、また華やかでにぎやかな「田楽」の囃子(はやし)ありといった具合に、合唱、各種の打楽器、コントラバスがその世界を織り成します。もう理屈抜きに面白いと思います。(アンサンブルするのはちょっと難しいのですが(笑))

「音(おん)」のイメージが宇宙のように拡がる音楽。それが藤家渓子:混声合唱、ヴァイオリンとギターのための「楽園の泉」です。
この曲めっぽう気に入りました。(藤家作品が最近とみに演奏されるようになりましたね)
ほんとに音のイメージが過去から現在、そして未来へと行き来しているようです。懐かしい音、どこかで聴いたような旋律、心の奥底に流れつづける鼓動、韻律。
不思議な時の流れ、印象的で素敵な曲です。
ただしこの曲、楽譜を見てしまうとリズムが複雑で数字が好きな人でないと歌えないないような気がします。(笑)興味あるかたは是非とも楽譜(出版されています)を見ることをお薦めします。(拒絶反応が起こりませんように(笑))

木下牧子:弦楽オーケストラのための「シンフォニエッタ」、そして
:合唱と管弦楽のための「虚無の未来へ」
「虚無の未来へ」はすでにCDのための録音が終わっています(今年の秋にリリースする予定)。音が色彩的でその時空を超える魅力的な旋律に酔いました。
繊細な音、かつ構成は個性的で、そのイメージは強烈に映ります。
「シンフォニエッタ」は合唱曲で人気の高い木下作品ですが、その底には器楽作曲家としての才能に満ちているということを示す作品だと思います。
オーケストラの響き、その木下牧子の世界を満喫していただけるものと信じます。

またまた、舞台裏のことを書いてしまうのですが・・・・・・・・。
合唱団の好きな曲「邪宗門秘曲」、そして「鴎」(オーケストラ伴奏)を歌いたいというんですね。(私が誘うような顔をしたからでしょうか(笑))
声が疲れるというのに・・・・・。
時間の長さが心配だというのに・・・・・・・・。
これは聴いて下さっているお客さんにお任せしましょう。
一応演奏できるよう用意しておきますね。
さて、どうなることでしょうか?

是非沢山のご来場をお待ちしております。

No.370 '01/6/13「現代音楽シリーズへのお誘い」終わり