第4回

「ファルセット」への道(1)

「ファルセット(頭声)」を知る!これが発声の基本です

皆さんは体験的に解っていらっしゃいますね。人の声には二種類あることを。
男声にも、女声にもある「声のひっくり返り」、それが二つの分岐点です。
実験してみましょうか。
男声の場合、中庸な声でラの音から初めて上向していきます。そうするとレ〜ファのあたりで声がひっくり返ります。

女声の場合はラの音からフォルテで下降していきます。ファ〜レの付近がひっくり返るところです。
人によると、例外的に既に声をコーディネイト(調整)することを知っていて「ひっくり返り」がない人もいますが、声の訓練を受けない初心者は必ずといっていいほど、この付近で「声がひっくり返る」ものです。
つまり、中央ハ音から一つ右隣のレからファまでの間で「ひっくり返る」箇所、それが声の「ブレイク」と呼ばれているところです。
この「ブレイク」の上方が「ファルセット」。下方が胸声の音域です。
ちょっと話が逸れますが、人の音域がどうなっているかおわかりですか??
最低音は決まっています。通常ミの音です。これは声帯の長さが決まっているものですから当然のことです。ミより低い声が出れば、平均より声帯が長いわけです。
ミより上で声が出なくなったら、人より声帯が短いと思えばよいということになります。
最高音は決まっていません!理論上は際限が無いのです。
声帯を巧みに縮めることによって声帯を短い状態にすることができるからです。
ですから、「私は高い声がでません」「生まれ持った体質ですからしかたないんです」というのはウソ、根拠がありません。高い声は誰でも出るものです。また良い発声とは、<高音が出せる>ということです。勿論バスやアルトの人でもです。
「ミ」の音、これは今後話を進めていくさいにも大事なポイントです。記憶しておいてください。
話を戻します。
発声での目的。それはただ一つです。(敢えてこう言い切りましょう!)
この「ブレイク」を無くすことなのです!
二つの声区(ファルセット、胸声)を滑らかに移行すること、そのテクニックを身に付けることなのです。
そしてその鍵を握っているのが、ファルセットなのです。
「胸声」の声からでは達成できません。「ファルセット」による声の強化がこれに繋がるのです。

さて、それでは「ファルセット」とは一体どんな声なのでしょう。
歌っている人の体感では、頭の方で響いていると感じています。そしてその声は細く、息混じりです。お腹や胸、そして首の筋肉を緊張させてはこの声は出ません。弛緩が必要です。
しかし本当に「ファルセット」を理解するには次の生理的な機能を知ることが大事です。「ファルセットのとき、声帯は伸展している」ということ、つまり声帯が「薄く、のびるている」のです。もうお解りだと思いますが、その反対の、声帯が縮んでいる状態が「胸声」です。

これから始まろうとしている私たちの発声への道、それは ということを知ることから始まるのです。
(次回は今月の23日に掲載します)

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