第9回

「呼吸」と「リズム」

さて呼吸の話です。
発声上で「呼吸」が整えられれば殆どの問題は解決します。
それほど重要な事柄なのですが、誤解されていることや、間違って伝えられていることが多すぎるように思われます。
今回は単純・明快な答えとして記述してみましょう。
ホントに簡単ですよ。

「呼吸法のポイント」です

  1. 歌う前に「吸」ってはいけません!
  2. 「呼吸法」の練習は「吐」く練習です!
  3. 「吐く練習」とは、もうこれ以上吐けないというところまで体に入っている空気を全て吐き出すことです。そして出し切ったら瞬時に筋肉の力を抜きます。すると自然に空気が入ってきます。全身力を抜いた状態で空気を受け入れます。
これが声楽発声時における「呼吸法」の全てです。

以下は若干の重要な補足説明。

  1. 「吐く練習」のポイントは下腹部を引っ込めるようにして息を吐き出すことです。
  2. 下腹部やその周りの筋肉を効果的に動かすには「大殿筋(だいでんきん)をしめる」ことです。つまり、肛門に向かってその周りの筋肉をぎゅーっとしめていくのです。そうすれば下腹部も引っ込む動きを見せます。
  3. 大殿筋をしめると腰が内転することを確かめましょう。
これで「呼吸法」の話は終わりです。
いろいろ難しい説明をされることが多いのですが、これだけです。
「呼吸」を意識することは日常ありません。それが意識したとたん、生理的に自然な動きができなくなるのですね。
意識して練習をする時、上のことで充分です。そしてこれが現段階での呼吸法の最新、最前線の情報です。

私が目指す発声法は「自然」に、ということです。
筋肉を不自然に持ち上げたり、硬直させて強い声や響く声を作るのではなく、生理にあったバランスのとれた運動による声作りです。

ここで扱う「リズム」はこの「呼吸法」に関するものです。
「日本のリズム」とか「西洋のリズム」とかいう問題は別に改めて論ずるつもりです。
呼吸法の練習には、リズムを感じながら行うことが重要です。
「吐く」時間は長く、それも生命力を感じるような前向きなリズム感を伴って行われ、「吸う」時間は短く、リズミックに行うことです。
連続する運動は独自のリズムを感じながら行われるべきものです。
筋肉の運動は静止された状態の連続でイメージしてはいけません。
あくまでも流れる運動として捉えるべきで、そのためにもリズム感が絶対必要です。このことは成果を左右する大切なポイントです。


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