第17回('97/1/15)

音源の種類

<音の不思議>の4回目。今回は音源について書いてみましょう。

それでは最初に、私たちのテーマであり且つ最も身近である<人の声>から。
再三書いてきましたように、声の音源は声帯。その声帯の振動によって音の元である<声帯原音>が生じます。そしてこの<声帯原音>が共鳴器(口腔など)によって言葉や、歌になるのでしたね。
共鳴器は言い換えれば特定の周波数を選択して響かせる装置です。
人によって声が違ったり、声量が違っているのはこの共鳴器の違いによります。
言葉の母音は特徴的な周波数成分で組み立てられていることが判っています。そしてこの特徴的な部分に名前が付けられています。<ホルマント>。とても重要ですので覚えておいて下さい。(実はこの<音の不思議>の連載はこの<ホルマント>が最終目的として説明しようとしたものでした)
<ホルマント>の話はもう少し後にします。

音源の2つ目は、弦楽器です。
弦楽器の代表はバイオリンですね。弦が弓や指によって振動され、それがバイオリンの胴(表板や裏板)に共鳴し、音となるのですね。
名工が作ったバイオリンは素晴らしい響きを作ります。人の声の所で書いた共鳴器がバイオリンの胴にあたります、その胴がすばらしいのですね。
しかしちょっと見落とされているものがあります。
それは弓ですね。
弓は馬の尻尾の毛が使われます。これに松ヤニを塗って弦を弾きます。顕微鏡で毛を拡大するとうろこ状のヒダがあるのが見えます。そのヒダの間に松ヤニが詰まって弦を引っかけるのだそうです。
ヴァイオリン本体も勿論大事なのですが、あまりにもそちらの方に目が行ってしまい、弦の振動を作り出す弓にあまり関心を持たれていないのは残念です。(もちろん、バイオリニストはこの辺の事情について、自明の理です。)

3つ目はフルートや尺八のような音源。
これらの楽器は息を吹き付けることによって規則的な空気の渦を作り出し、その渦によって音を出します。
もっと身近にこの種の音を出す楽器を私たちは持っていますね。
口笛です。
舌や頬を使って口の容積を変えたり、吹き出し方を変えて渦を調整します。
それで高い音を作ったり、低い音を作ったりするのですね。
この渦のことは<カルマンの渦>と呼ばれます。
木枯らし、その中に揺れる木の枝や電線が鳴るのもこの渦によります。
この種の音の特色を是非とも覚えておいてください。(これで覚えておいていただくことが二つになりましたね。)
その特色とは、渦が同じように作られれば音に差が無くなり、似かよった音色になるということです。
口笛の音を聴いて誰が吹いているかがわかりますか?

最後は太鼓の音です。
振動するのは太鼓の<膜>ですね。瞬間的に打たれることによって膜が振動し、その膜によって空気を振動させ音を作る。
大きい太鼓は長く響き、小さな太鼓は短時間しか響かない。音の高さは膜の張り方を変えて変化させますね。
膜自体の延びによって(湿度や温度)も多少音の高さは変化します。
和太鼓が独特の響き方をするのは、筒の両側に膜が張られ、影響し合うその複雑な振動が原因です。

さて音を作り出す要素を書き出して見ました。
これらの要素を考えながら「声作り」、そして心に響く音とは何か?を考えていこうとしているわけです。
<音>とは不思議です。
次回は音の伝わり方についてです。


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