第25回('97/10/6)

<様式>を学ぶ

現代の曲を演奏する時、様式(スタイル)について悩むことは少ないですね。
作曲家に訊ねることもできますし、時には演奏法が独自なものがあって個々に考えなければならないこともありますが、曲の持つ雰囲気といいますか、全体の曲想は掴みやすいと思うんですね。(曲種にもよりますが)

しかし、<ルネッサンス>、<バロック>、<古典>といった古い音楽を演奏するときには「様式」を考慮しなければならなくなるんです。
中には、「関係なく、私の感性で演奏するんです。」という方もおられるかもしれませんが、「様式」に関して見識があるのと無いのとでは、結果に大きな開きが生じると思うのです。
今回はその「様式」について書きます。

大きな要素から詳細な項目へと進みましょう。
先ずは以下のように分けます。

  1. 教会様式
  2. 世俗様式
やはりこの二つはいつの時代でも様式が異なります。
大雑把な違いを書くと次のようになるでしょうか。

◇教会様式
レガート唱法が基本ですね。
テンポは余り動かしません。(アゴーギクを過度にとらない)
純粋なハーモニーを求めます
◇世俗様式
リズミックな要素が多くなり、音と音とは切り離して演奏することが多いです。
テンポは目まぐるしく変わる傾向にあります。(アゴーギクも大きい傾向)
もう一つ大事な分け方があります。
以下のことです。

これは音楽の社会的な変化に合わせて、楽器が改良され、声も質的変化を遂げたことに関連します。1600年、1800年とは一応の区切りとして記しました。勿論作品や作曲家よっては年代がずれることがあります。

◇1600年以前(ルネッサンス):実は伝えられているのは伝統としての<教会音楽>の方が多く、世俗音楽は性質上、楽譜や演奏スタイルが記録として残されていることが少ないです。ですから以下の要素は教会音楽に当てはめられます。
純粋なハーモニー
均一性
厳格な規則
◇1600年以後の「音」
一音一音は不均等。個々に音質や音響を持っていたようです。
「言葉」が音を支配し、奏法や唱法は「言葉」を模す傾向にあった。
◇1800年以後の「音」
音は、<強く><大きく><均一性>を要求されました。これは演奏する場所がそれまでと比べてより広く、大きくなった為です。
音域が広がり、表現の幅も大きくなりました。
もう一度まとめてみますね。大きく分けると次の二つでしょうか。
「宗教的」か「世俗的」か、そして「時代による音の性質」です。
この二つを考慮しながら演奏スタイルを定め、それに解釈を加えるわけです。

個々の実証については、曲を例題として掲げながら次回から見ていくことにしましょう。
しかしながら、先を急がれる方のために「様式を学ぶ」手っ取り早い方法をお教えしましょうか。
それは
過激で、話題性に富んだ演奏家(指揮者)の演奏会、あるいはこの場合はCDがいいかもしれません。それを聴くことです。
そこには示唆が沢山含まれていることでしょう。
そこで聴かれる音楽は「普通」とは違うハズです。
その差異を考えれば自ずと様々な問題点(様式も含めて)が解ります。

それでは次回から個々について確かめていきましょう。

第25回「<様式>を学ぶ」終わり


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