第29回('98/6/12)

ノドの新・矯正法

「裏声操り脱・音痴」と題する記事が新聞に掲載されていました。

「ポリフォニー音楽の実践」を書き始めたところですが、この話題を挟みます。
私の提唱する発声に関する事だからです。
記事によると、三重大学教育学部音楽科助教授で声楽家の弓場(ゆうば)徹氏が独自に声の矯正法を開発した、とあります。
その氏の理論の基はコロンビア大学客員教授のコーネリウス・L・リード氏との研究成果だそうです。

私のこの「合唱講座」を読んで下さっている方は既にご存じかと思いますが、私の発声メトードの基点となったのもリード氏の著作です。
当時を振り返ると、読み進みながら<小躍りしたくなるような興奮>を味わったことを今もハッキリ思い出します。
それまで抱いていた発声上の問題点がすっきりと解決し、新しい発声法への取り組みを私に促した<決定的な出会い>でした。

弓場氏はこの理論をもって<音痴>の矯正をされているとのことです。
その成果は確かなようで、長引いたケースもあるそうですが、約百人のケースで15分ー30分で直るとあります。
この時間には少し疑問もありますが(私の実践の経験を通してです)、でも治るのは私も確信します。
この記事、専門家でない記者さんのせいでしょうか、あるいは一般向けに書こうとしたせいでしょうか説明が不十分な感じがします。
<音痴の矯正>というところにポイントが置いてあり、リード氏の意図が正確に伝えられていないと思うのですが、このような氏の提唱する発声法の見直しが声の<矯正>の面も持っていることもまた確かなことです。

1)はっきりとした裏声を出せるようにする
2)裏声で簡単なメロディーを歌う
3)裏声で歌い始め、表声の音域まで下がっていく

ここで書かれてある<裏声>は<ファルセット>のことですね。
<表声>というのは<胸声>(この判断は実は少し難しい問題を含んでいます)のことです。

重要なこととして、<裏声>(ファルセット)の使い方がポイントですとこの記事には書かれています。
その通りなんですね。
我が国でも以前よりは(ファルセット)の重要性は認知されてきているとはいえ、まだまだファルセットを意識して発声している人は少ないと私には思われます。
こうした状況にあってこのような記事が掲載されることはとても喜ばしいことと思ってしまいました。

<発声>についてもっと関心を持って頂ければ嬉しいですね。
実は、<矯正>の手段としてだけでなく、普段の、日常の<発声>にとってもこの<ファルセット>は重要なことなのです。

第29回「ノドの新・矯正法」終わり


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