第34回('99/3/31)

声の大きさについて

今回は楽曲の演奏奏法から離れて「声量」について書いてみます。
この「合唱講座」をご覧になっている方からのご質問がきっかけなのですが、以前からこの件に関して幾人かから質問を受けておりました。

ご質問の主旨は「声は大きくなりますか?」ということですね。

一人で歌って楽しんでいる場合などは「声の大きさ」など気にしなくていいですね。
カラオケに行けばマイクを通して声の大きさも変えられますし、あまり大きな声を出しすぎると周りの人々からにらまれたりすることもありますし・・・・・。
このように普通は「大きさ」を意識することはないように思われます。

しかし、本格的に「声楽」を志したり、合唱などで歌った場合などは「大きさ」が気になるものですね。
特に「声楽家」になろうなどと思えば、「声量」はもっとも重要な課題となります。
今までにも音楽的には立派でも、「声量の無さ」のために何人者人たちが「声楽家」を断念していったのを見てきました。
切実なんです。

結論から言いますね。
「声量を大きくすることができます」

要は
全筋肉の総合的な訓練によります。
<声帯>だけの問題ではありません。
<声帯>と<声帯>を取り巻く筋肉、そして、全身の筋肉との関連づけです。

そして「柔軟」な筋肉が必要です。
筋肉とは、最も<柔>であり、そして最も<剛>でなければならないんです。
つまり、最も柔らかい状態から最も堅くて強固な状態までを作ることが出来なくてはならないのです。
そうすることでそれぞれの筋肉が結び合い、「声量」に関係する筋肉群の基礎が作られていきます。

<声帯>も「柔・剛」の訓練をします。
これは、「ファルセット」と「胸声」の交互運動が最適です。
「ファルセット」は筋肉の「伸展」を、「胸声」は筋肉の「収縮」と関係があるからです。
筋肉を<引っ張ったり><縮めたり>することで筋肉がより強くなっていくということを我々は日常の体験によって知っています。
「高音」を「ファルセット」で、そして「低音」は「胸声」で歌います。それを交互に歌うといいのですね。これが<声帯>の強化への方法です。(「ファルセット」「胸声」の発声は注意深く行われなければなりません。また長時間の練習はよくありません)

多くの人が「声量」を増していったのを見てきました。
発声を受け始めた頃には<蚊の鳴くような声>だった人、その人が見違えるように立派な声を出すようになるのを見てきました。
訓練によって「声量は大きくなる」、これが結論です。

「歌うこと」、それは「力む」ことと結びついています。
余計な「力み」を取り、適切な筋肉の伸展・収縮を行う、これが発声における究極の目的です。

(実は「声量」のことについて語るとき、「共鳴」についても触れなければならないのですがこれはまたの機会とします。始めの段階では「筋肉の強化」を意識することで相応の声量が増すと思います)

第34回「声の大きさについて」終わり


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