第49回

響きの核と領域


「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」で発声してもその響きづくりが拙ければ「良い響き」として聞こえてきません。
(まぁ逆も真で、「良い響き」として聞こえてこなければ「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」も出来てはいないということなのですが)

ということで今回は「OCM歌唱発声法」の《核》「響き」についてです。

音の元は声帯で作られる「喉頭原音」ですね。
ここで発せられる音は小さく弱い雑音です。
それを「増幅」させ、「響き」を作るのは「声帯」の上部、つまり喉頭腔・口腔・鼻腔、それに咽頭です。
それに補助的に前頭洞が加えられるかもしれません。
これらの空洞を利用して音に「美しい響き」を与えます。

まず、「響きづくり」に大きな影響を与えるのは口腔と咽頭だと知ってください。
そしてそれ以上に最も重要なところが上咽頭および鼻腔です。

響き作りのポイント

脊柱図



口腔は母音づくりに大きく関与します。(音色に関与)
咽頭や鼻腔は音の大きさ・深さ・広がりに関与します。
特に上咽頭および鼻腔は歌唱発声にとって重要な《響きの核》づくり貢献します。
これらの場所ではいかに効率的に《広げる》か、それが重要課題です。

口腔および咽頭の狭まり
舌が上がり、喉頭も上がって咽頭が狭まっています。
この状態の時、声は響きも少なく、強さも大きさも弱いものとなります。

脊柱図



口腔および咽頭の広がり
舌が下がり、喉頭も下がって咽頭が広がっています。
この状態の時、声は響きを持ち、強さも大きさも増します。

脊柱図



歌唱発声にとって重要なことは喉頭と連動している舌の状態です。
舌が硬くて口腔の広がりに支障をきたすばあい、充分で満足のいくような響きは得られないでしょう。
柔らかい柔軟な舌がいいですね。(口腔が広い、これは歌う者としての良い条件です)

咽頭の広げはひたすらこの部分の《広がり》のイメージにかかっています。
声をどのように飛ばし(放物線を描きます)、距離を持たせるか、そのイメージです。



チャクラと《核》共鳴区
「OCM歌唱発声法」でもっとも重要視するのは《響きの核づくり》です。
《核》とは響きの中心点。OCMではその場所を【眉間】としています。(赤いところがそうですね)
チャクラ(第三の目〔第6チャクラ〕)と呼ばれているところです。
チャクラとはサンスクリット語で「車輪」または「輪」という意味。精神とも関連したエネルギー中枢の一つだと言われています。(人間には7つのチャクラがあるそうです)
(インドの女性などが額に付けるビンディ(化粧)もそれに由来してのことだと思われます)

脊柱図



この【眉間】に《響きの核》をもってきた時、声の威力がもっとも増します。
よく飛び、声も輝き、精神的な響きというのでしょうかとにかく声が〔生きてくる〕のですね。
(ピッチが定まるのもこのポイントです!)




それぞれの響きの領域
チャクラを焦点とする《響きの核》を中心に、上部に《ファルセットの響きの領域》、そして下部に《胸声の響きの領域》が加わります。
初心者や誤った響き感覚に陥っている人は《胸声の響きの領域》のみです。
訓練を伴っていない人、軽い声の志向の人は《ファルセットの響きの領域》のみです。
理想の発声はチャクラを焦点とする《響きの核》を中心に、《ファルセットの響きの領域》と《胸声の響きの領域》を加えたものでなければなりません。

脊柱図

そしてこれも重要なことなのですが
チャクラを焦点とする《響きの核》を中心に、《ファルセットの響きの領域》と《胸声の響きの領域》の割合をバランス良く保たなければならないということです。
そうでなければ自然倍音によるハーモニーが立ち上がりにくいということになります。
もう少し詳細に言えば、倍音構成の基本の響きは《胸声の響きの領域》に置き、その上の倍音はそれぞれに《響きの核》《ファルセットの響きの領域》に置くということ。
すなわち、それぞれの領域に於いても正三角形の倍音構成を取らなければならないということなのです。

響きづくりは「自然倍音」によって作る。
それはどの領域でも共鳴し合えるということに繋がります。
そこで立ち上がる《響き》はきっと人間にとって、生きる躍動、生きる喜びを呼び覚ます大きな力となるのではないか、そう思えてなりません。
まだまだ私たちは自然の中に生かされている小さな存在です。
しかし、これらの《響き》の体験によって私たちと自然は、いや、宇宙と私たちは繋がれるんだと思うのですね。

第49回「響きの核と領域」この項終わり


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