第57回

「カウンターテナー」の発声


この「合唱講座」No.27で初めて《男声アルト》とも呼ばれる「カウンターテナー」を取り上げました。
そこでは概説・略説として雑文的に書いています。
発声法を近々書こうと思っていたのでしょうが、それを果たせずに項目が変わっていきました。

最近、「カウンターテナー」の発声、練習法は?という質問がMailによって幾つか来るようになりました。
よい機会を与えていただいたと思います。
ここにその発声および要点などを書いてみることにしましょう。(エクササイズ〔練習課題〕などは示しませんが通常の練習を応用して試してみることができます)
できれば再度No.27に目を通してからこの先を読んでいただければより良いかと思います。


「カウンターテナー」はファルセット(裏声)を用いて女声音域(男声のオクターブ上)を出すパートです。
アルトを歌ったり、人によってはソプラノまでカバーできる人もいます。
最近では「カウンターテナー」志向の方も増えていっているようで、多彩なプログラムも可能となっているのが嬉しいですね。
私が取り入れ始めた頃は、まだまだその必要性が理解されないでいました。
この流れに歴史を感じます。

No.27でも少し触れていますが、『c.t(「カウンターテナー」)を用いたハーモニーは、女声アルトを用いたハーモニーに比べて力強く明るい輝きの印象を与えます。音の輪郭が明確なゆえにポリフォニー音楽には最適です。倍音の配列が女声アルトに比べて整然としている、それが原因でしょう。ルネサンスやバロック時代の合唱曲には欠かせない存在となっています』
これが最も大きな特徴、そして必要性です。


では練習法です。
1)声帯の純粋なファルセットの状態から少しづつファルセットを保ちながら声帯を広げていきます。喉頭を下げていくと言ってもいいでしょう。中咽頭、下咽頭も広げていく感覚です。〔声の質変化。声量確保です〕
〔純粋のファルセット(通常の裏声と言ってもいいでしょう)は歌唱にはむいていません。声量もないし、響きもありません。か細く、モノトーンです〕
ファルセットの強化です。共鳴腔を用いてファルセットの声・音色をより広く、深く、大きくしようというわけです
(参考に共鳴腔の図を掲載しておきます。)

口腔

2)《声の芯づくり》。額の中心に声を集めていきます。〔声帯振動部分の収縮につながります〕このことによってこれまでのファルセットに声の<核>となるものが生まれ、別の声に劇的に変化していけば成功です。

重要。【最大限の声帯伸展をおこないながら、声を発する声帯振動部分の収縮状態を作ります】


3)《響きづくり》。上咽頭も広げて共鳴腔(鼻腔も)を確保していきます。
この仕上げの段階では、通常の発声時と同じレベルです。
どう美しい響きをするか、それぞれの共鳴腔づくりの問題です。〔共鳴づくりですね〕
下の図、緑の領域を赤の領域に近づけていくのが課題です。

響きの領域

さていかがでしょうか。
「カウンターテナー」、それはファルセット発声から生まれます。
(女声の音域で!通常の男声では女声の一オクターブ下となります。男声が女声の音域を歌うためには「ファルセット」を用いるしか方法はありません。〔通常では、と強調しておきますね。最近では声変わりが無いという男性も現れているようです〕)
如何にファルセットを強化するか、これに尽きます。
気をつけて下さい!ファルセットだけで発声するのは良くありません。
長時間の発声に耐えられる、響きも豊かな新しい組織構造を作らなければなりません。
挑戦する意義はありそうです。(新しい響き、表現が生まれる可能性が大だからですね)

第57回「「カウンターテナー」の発声」終わり


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