第100回('04/11/12)

【全日本合唱コンクール全国大会】(中学校・高等学校部門)の感想

10月30日(土)・31日(日)の両日にわたって行われた【全日本合唱コンクール全国大会】(中学校・高等学校部門)の審査員をお引き受けし、計73団体の演奏を聴かせて頂きました。
私の審査基準、感想を書くことが参加された方々に何らかのアドバイス、そして責任を果たすことになるのではないかと思い、これまでにも一団体ずつ感想を書いてきたのですがさすがに今回はその時間もなく(本当に忙しい毎日が続いています)、その任を果たすことができないでいます。
しかし、全体の感想とするならば書けそうなので、「私の記録」という意味合いも込めて書き残すことにしました。

高校・中学と聴かせて頂き、<発声>、<ハーモニー>、<アンサンブル>のそのレベルの高さに本当に感心させられました。
明るい響き(頭声や声の当て所と関連)、倍音列に沿った美しい響き、これなどここ数年来私が聴いてきていつも不満だった思いなど消し飛んでしまうような体験です。
アンサンブル力もたいしたものです。
息の合わせ、難しい音程やリズムもピタリと決まります。変拍子も楽しみながら歌っている様子は超難度をこなすスポーツ選手を見ているよう、いや多人数ですから、一糸乱れぬ団体競技、マスゲームを見ているようで堪能しました。

ただ、やはり私はある種の演奏に大いに疲れを感じました。
正直、途中で審査を止めて出て行きたい衝動にかられたほどです。
これらの演奏では点数を付けるのに苦慮しました。
ここまでやってこられた努力、ご苦労を察せすればそう点数を私の思いのことなどで低くすることもためらわれます。
しかし、悩み、苦慮した結果(本当に悩みました)、今回は私の<感性>思うがままに採点させて頂きました。
その結果、全体の順位から大きく離れたものになるだろうことを予想していていたとはいえ、見事な相違となりました。
(上位は私の強い<思い>の結果になっていると思います。しかし下位の順位についてはもう順位をつけられないぐらいの差異、甲乙つけがたいレベルでのつばぜり合いにあると思って頂ければ嬉しいです)

私が大いに(強調しておきます)疲れた演奏とは?
「物量作戦」的な演奏、ただ物量にものをいわせるような演奏です。
響きも、ハーモニーも、人数も、そしてエモーショナルなものまでも物量的に飛んでくる、それらが強ければ強いほど音楽的なメッセージや内容を私などは聴きたくなるのですが、それが見出せない。
吠えたり、叫んだり(失礼!こんな書き方はしたくないのですが・・・。しかし言っておきますが、その吠えも、叫びも決して汚くはなく、実に美しく、また刺激的な響きで歌われます。だからこそ問題は深くて複雑だと私は考えます)、意味が薄いとしか言いようのない羅列された難しい変拍子、そして聞こえてこない、届いてこないテキスト(言語)。
聞こえてくるのはただただ「技巧」。
これらの演奏に私は本当に困惑したのでした。

コンクール二日目の「中学校の部」で私は泣きました。
二つの演奏で、思わず涙がでて止まらなくなりました。
一つは(学校名を伏せておこうかなとも思いましたが、記しておきます)、長野県(中部支部代表)【伊那市立東部中学校合唱部】の「刈り干し切り歌」です。
男声の柔らかい響きと女声の充分な響き、そのブレンドが美しい。母音の深い響きだけではない美しさに耳が惹きつけられました。
響きと心が一致していた、と言っていいのでしょうか。女声のあるフレーズの響きに私の心が共振したのですね。思いもかけずその時「涙」したのでした。
もう一つ、それはラテン語による演奏です。
山形県(東北支部代表)【鶴岡市立鶴岡第一中学校合唱部】のタリス「エレミア哀歌」から第一部です。
意味が解った演奏と聴きました。そしてその内容は感動的でした。
言葉とフレーズに私は耳が引き寄せられました。正直プログラムを見た時点では少し懐疑的であったことを告白しておきます。
だからこそ、歌い始めてのその展開に私は驚きました。
集中力、それがフレーズごとに持続され、増していき、最後の「エルサレムよ」に私はまたしても「涙」でした。
中学生たちがここまで歌う!
これを聴けただけでも私はこの仕事をお引き受けして良かったと思いました。

当日の「メモ」を見ながら書いています。
出場した他演奏のメモも読みながら当日を思い起こしています。
欠点(問題点)が書いてあるその中に、一杯それぞれの学校の「良さ」が書いてあるのを読むのは楽しいです。
今回は全部書くことができませんでしたが、沢山素晴らしい演奏を聴かせて頂けたことを心から感謝する次第です。
出演された方々、本当にご苦労さまでした。そして「ありがとう!」

第100回('04/11/12)「【全日本合唱コンクール全国大会】(中学校・高等学校部門)の感想」この項終わり。


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