Date: Fri, 10 Jan 97 13:27:32 +0900
From: UEDA TATSUYA 
Subject: [OCM:01760] 青春紀行その 8

☆☆☆ 青春紀行 その8 ☆☆☆

松本城にひとしきり感動した後は、やはり、その北側にある 『開智学校』に
行かねばなるまい。今思い出したのだが、松 本の開智学校と言えば、歴史の
教科書に写真付きで載ってい た様に思う。

実際に見る開智学校は、まるで壁に水彩絵の具で書いたよう な窓を持つ、お
洒落な洋風建築である。ここも正月休みで閉 館していたのが残念である。普
段はちゃんと窓が開いていて、 『壁画』には見えないらしい。(ガイドブッ
クの写真による と)なお、開智学校の南隣に、現在の開智小学校がある。か
の友渕小学校よりも敷地が広そうで、よい環境だ。 

開智学校に隣接して、『旧司祭館』がある。これは、松本カ トリック教会の
司祭館として、比較的最近まで使用されてい た『アーリーアメンリカン・スタ
イル』の木造建築を、この 地(開智公園というらしい)に移築したそうである。
確かに、 アメリカ東部の田舎でよく見かけるスタイルだ。 

移築には、松本市内のとある篤志家(名前は失念)が協力し たそうだ。この事
は、松本城保存に関わるエピソードを思い 出させる物がある。ここで、私の松本
に対する印象をまとめ ておこう。

まず第一に、松本城の遺跡公園としての整備の良さ。開智学 校の保存状態の良さ。
そして旧司祭館のような、決して公的 建築物とは言えない建物でも、その史跡的
価値を認めて移築 ・保存しようとする、機運が市民にあること。これらに、松
本市の文化都市としての自負と、それが市民に根付いている 事を感じる。

特に、松本城の整備の良さは、単に観光資源としての捉え方 では、理解できない
ほどに行き届いている。前述の松本城保 存に関わるエピソードを知り、何かしら
腑に落ちた、と感じ た。

明治維新、それは大改革の時代であった。それまでの価値観 がすべて崩れ去った
出来事であった。これを敗戦後の世の中 と比較する学者は多い。その明治維新に
於いて、城や天守閣 といった建築物は、旧権力の象徴でもあり、廃城や取り壊し
が全国で行われていたようだ。松本でも、もちろん例外では なかった。ここに、
開智学校初代校長の某氏(これも名前は 失念)は松本城の文化財的に価値にいち
早く注目、松本城の 保存運動を、市民レベルで展開したそうである。 

また、天守閣が3千円で売りに出された事もあったという。 このときにも、松本
市内の篤志家(名前は失念)が、運動を おこし、結局買い戻したそうである。

このように、市民レベルの運動で守り続けた物であればこそ、 これほどに保存・
整備が行き届いている事が納得できる。そ して、その精神は現在も市民の間に根
付いているのであろう。 

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UEDA TATSUYA
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