ベートーヴェン シリーズに寄せて ~ その2


塩川先生のベートーヴェン
ヴァイオリン/木村直子

マンスリーコンサートでバッハのドッペルコンチェルトとモーツアルトの協奏曲を共演していただいたのはもう2年前ですね。もう一度、しかも珠玉の名曲ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を我々が伴奏できるなんて本当に幸せです。
それこそ京都でモーツアルトの弦楽3重奏KV563と弦楽5重奏ハ長調(最近マンスリーで演奏しました)という渋いプログラムのコンサート聞いてあまりの素晴らしさに楽屋に行って挨拶して、それからとにかく押しかけ弟子入り(?)して、ヨーロッパに滞在して当時住んでおられたザルツブルクへレッスンに通ったり、もの凄い田舎での講習会に参加したり、日本に帰ってからも当時在団した合奏団と何度も共演したり、イタリア・フィレンツエに引っ越された後一度行った時は高熱出して素晴らしい座椅子に寝かせてもらったり・・・・・いつもお世話になってすみません!!!
塩川先生の音楽を一言で言うと、音楽の一番大事な所を虚飾無く捉えて表現したクラシックの王道だと思います。クラシックの神様に仕える伝道師かな。
でも厳しいだけではなく、前回SCOとの共演の時にはおうちのワンちゃん(名前はフローラ)の写真いっぱい見せてくださって若いメンバー一同をとってもウルウルさせていただきました。
とにかく不肖の弟子の私には厳しい言葉いっぱいかけていただきそのたびにビビりまくるのですが次こそはもっとちゃんと演奏しようと思っていますのでどうかお手柔らかにお願いいたします・・・・・。
前回モーツアルトの協奏曲第5番やった時に一番ビックリした事は・・・・。
第1楽章はまず速いオーケストラだけの序奏があって、それからゆったりしたオーケストラ伴奏によるヴァイオリン独奏があって速い主部に行くのですが、塩川先生、ゆったりとしたヴァイオリンソロの最後の音をなんとA線の開放弦(指で押さえないでそのまま演奏)で演奏したのにビックリしました。そんな演奏ってこの長い人生(何歳かはあえて秘しますが)で聞いた事無かったです。自分で演奏する時も絶対D線で押さえてちゃんとヴイブラートかけています。普通は開放弦で最後の音を演奏するなんて恐ろしくて・・・・。でも塩川先生の演奏聞いて「開放弦って美しいなあ」って初めて感じました。後何年演奏できるかわかりませんが、先生のように演奏できる瞬間があるのかなあ・・・・と夢見ています。どうか日本で二度と無いこのコンサート、是非、御来場くださいませ。



(2007年5月号「シュッツの会」便りより転載)

ベートーヴェン シリーズに寄せて ~ その3「ベートーヴェン 今回の聞き所」

【2007/05/05】