ベートーヴェン シリーズに寄せて ~ その3


来たる5/13の「ベートーヴェン その魅力のすべてシリーズ」の聞き所について、SCOの木村政雄がご紹介します。

ベートーヴェン 今回の聞き所
チェロ/木村政雄

ベートーヴェンの9つの交響曲では奇数番号が特に有名で、例えば第3番「英雄」、第5番「運命」、第9番「合唱」というようにニックネームがついています。今回演奏する第7番にはニックネームは無いですが、大好きな曲です。初演の時は大好評で第2楽章はいきなりアンコールされたそうです。ベートーヴェンは勿論いろんな事で苦悩する時もあるけど根本的には人間の真善美を信じて止まないそういういわば向日性の音楽家でそれがどんな作品にも出ていると思います。
最初の前奏から主部へ移る所は本当にリズムだけが変わってそこにどんどん音が重なっていくのが印象的です。1楽章でもフィナーレでも最後のあたりで同じ音型の繰り返しの上でどんどん音楽が盛り上がって行くのは演奏していても気分が盛り盛りしますね。昨年末、某民放のドラマでオープニングテーマになった事もありますが、あれは単にエッセンスなのでそこから発展する所をじっくり聞いていただければいいと思います。
合唱の曲は・・・・まあ置いといて、ヴァイオリン協奏曲。この曲は初演ではあんまり人気出なくて、長く忘れられ、初演後60年以上過ぎて名ヴァイオリニストのヨアヒム(ブラームスと同時代)が演奏するようになってやっと演奏されるようになりました。生前あんまり反応がなかったからか作曲者はピアノ独奏に編曲してまた出版しましたが・・・・やっぱりあんまり売れなかったようです。。。。
この曲は技巧的にはそんなに困難なパッセージは無いのですが、ベートーヴェンの優しい情にもろい性格が感じられる全曲を聞いて「泣けてくる」と思わせるには真実の意味でのテクニック・音楽性、そして演奏者の人間性が要求される曲だと思います。
今回塩川悠子先生とこの曲できる事は我々音楽人にとって二度と無い無上の喜びだと思います。クラシックファンでこの演奏聞かなかったら一生後悔しまっせ。

交響曲、ヴァイオリン協奏曲に加え、合唱曲も小品ながら実にベートーヴェンらしい、繊細さと雄大さを兼ね備えた曲です。ベートーヴェンがぎっしり詰まった演奏会、どうぞ御来聴下さい。



(2007年5月号「シュッツの会」便りより転載)

ベートーヴェン シリーズに寄せて ~ その1「一期一会の「第七」」

【2007/05/05】