第7回

「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」(1)

大事な事柄の確認をしましょう。

  1. 歌唱における発声法は「ファルセット」から作る「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」による

  2. いわゆる「声のひっくり返り」が起こらないようにコーディネートがポイント(「ブレイク」を無くす)

それでは「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」作りの練習でのアドバイスです。
これはあくまでもイメージ作りへの一方法にすぎません。
一番良い方法は、目の前で「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」作りの実践を経験していただくことです。私のレッスンを見ていただくために見学に来られてもよいですし、そのうちに機会を見つけ、ご希望の方々のために見学日をもうけて集まっていただいてもよいかとおもっています。
発声法は紙上の説明では不可能です。つまり個々に対するアドバイスが異なります。
ここでの説明は基本的なこと、共通する事柄に限定されます。(時間をかけて個々のケースにわたる詳細な練習法、矯正法は後に記していくつもりです)

それでは練習です。
女声も男声もそれぞれのブレイク音の上の音から始めます。つまり「ファルセット区」の始まりの音から練習を始めます。始めのうちは間違っても「胸声区」の音から始めてはいけません。

  1. ファルセットで弱く声を出します。

  2. クレッシェンドしていきます。

  3. 声を出し始めた時、響きは鼻に抜けていない状態ですが、クレッシェンドをしながら響きを鼻に通していきます。そして同時に、鼻の奥の方から響き(息)が通り始めたころから喉頭を少し下げます(喉を広げる)。この時、ファルセットの声が違った風に変化すれば成功です。しかしそれが「胸声」になってはいけません。「胸声」になる手前の声がよいのです。ここでの判断が実は難しい
    これを試みようとされている方にとっては、その変化した声が「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」なのかどうかが解らないはずです。これが紙上での限界です
    しかし、次の事を試みてください。参考になるかもしれません。

  4. ディミヌエンドしていきます
    「変化した声」(「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」だといいのですが)からだんだん声を弱くしていき、もとのファルセットに戻します。もしファルセットに戻れなかったら間違っているかもしれません。つまりそれは「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」ではなかった可能性が大です。
    「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」から「ファルセット」への移行は簡単です(しかしこれも少しコツがいりますが)。
    お気づきになりましたか?
    この練習法、つまり<>というクレッシェンドしてデクレッシェンドするメッサ・ディ・ヴォーチェ(messa di voce)と呼ばれる発声のテクニックはこの「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」作りのために用いられたものなのです。
    どういった意味か忘れられ、用いられ方も解らないまま名前(メッサ・ディ・ヴォーチェ)だけが伝えられた気の毒な例です。

どうでしょう。お解りになりましたか?
紙上での限界を痛感しますが、何とかこの先も続けていきたいと思います。
上の練習法では(3)のところがミソですね。このことのために全てがあるわけです。
いったん、この「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」の声を知ると後は大丈夫。その声をメッサ・ディ・ヴォーチェのテクニックの応用で両声区に広げていけばよいのですから。

私の提唱する合唱の響きの基本は発声の見直しから始まります。
その「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」をどうか一度体験してみてください。
世界は変わって見えると思います。

次回はこの「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」における声帯の生理を説明しましょう。


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