第35回(2000/1/14)

音域を広げる

今回もこの「合唱講座」をご覧に成っている方からのご質問によります。
「音域を広げるにはどのような練習をすればいいのか」というものでした。

実践(練習方法)を書きます。(理論も必要です。イメージと確固たる目標が見えてくるはずです)

理論についてはこの「合唱講座」第4回、「ファルセット」への道(1)第5回の(2)をもう一度読んでいただければ幸いです。(声の高さに関係している〔輪状甲状筋(りんじょうこうじょうきん〕などの筋肉についての補足説明も必要ですが、それはまた違った角度からまとめて書く機会を持とうと思っています)
音域を高い方向に広げたい時は「ファルセット(頭声)」の発声理論が参考になります。
音域を低い方向に広げたい時は「声帯」及び「声帯周り」における筋肉の弛緩の実行です。

今回はご質問のあった、高音への移行(高い方向へ音域を広げる)の練習方法を書いてみましょう。

1)一音一音、半音階的進行で丁寧に、そして確実な発音(母音唱法の<a>か<e>)で声を出していきます。開始音は「ファルセット音」からです。

2)レガート唱法によって声を半音づつ高めていきます。つまり一息で半音高い音へとつないでいきます(声を切ってはいけません)。

3)【重要です】息を下から押し上げるようにして声を出してはいけません。声を押し上げるように次の声へと移行してはなりません。(押し上げようとすると胸の上部にストレスが生じます。そのストレスが喉頭内外の適切な運動を妨げます)
むしろ、上半身の積極的な弛緩、脱力を試みます。

4)適正な発声が行われているかぎり、あご、喉頭の周り、胸筋などには<力み>は生じません。

5)【重要です】発声されている声の響を額の位置に保ちつつ、上向していきます。(息を押し上げて発声された場合、響は胸の方向へと下がっていくはずです)

6)高音域での発声は慎重さが必要です。筋肉に対して細心の注意、集中力が必要になってきます。体全体の筋力バランスが要求されます(特に強固な背筋と下半身の筋肉が必要です)。
練習時間は短く、しかし毎日の発声トレーニングは必須です。
一音高くするのに、相当なる時間がかかります。

(この練習はすべての声種に共通です)

理論上では高音域の限度はありません。(下限は存在します)
しかし、個人差があるのは事実です。(すべての人が無限に高音域を広げられるわけではありません。)
骨格、喉頭、筋肉等の差違によります。(しかし、訓練によってかなりの広がりを持つこともまた事実です)

「発声」の宿命でしょうか。適切なアドバイス、処置は「声を聴いて判断」するしかありません。
独習では、練習を通じて伸び悩みが感じられた場合、中断を決意することも必要でしょう。
【最高音域と最低音域での練習は専門課程の部類に属します。なにとぞ、慎重に練習をなさってください!】

第35回「音域を広げる」終わり


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