鳥が空を飛ぶということ


鳥が空を飛ぶ。当たり前のことである。
そう、当たり前なのだ。当たり前にするために、鳥は空を飛ぶよう、非常に洗練された身体をしている。
その身体を作るため、長きにわたって進化してきたのだ。今までも、今も、そしてこれからも・・・。

人は今現在、‘鳥のように’空を飛ぶことは出来ない(そうでなければ飛べる)。
何故か?いくつか理由がある。

まず第一に、骨が重すぎる。
鳥の骨の重さは体重の5〜6%なのに対し、人間の骨の重さは体重の18%もあるのだ。
鳥の骨は中が空洞になっていて、しかも、もろくならないよう小さな支えの骨が入っているのだ。空を飛ぶためとはいえ、このような進化が起こったことが不思議でならない。

第二に、筋力が足りない。
鳥の筋肉は胸の翼を動かす部分に集中している。(他の部分の筋肉は軽くするため退化している。鳥には歯が無く、噛む筋肉も無い。飛ぶために退化したのだ。)その重量は鳥の体重の四分の一から六分の一を占める。すごい量だ。人間が鳥のように飛ぼうと思ったら、今の約20倍の筋肉が必要なのだ。

第三には、羽ばたいて飛ぶ術を知らない。
鳥はただ羽ばたけば飛べるというものではない。空気を上手く使って飛んでいるのだ。体の重い鳥はそれだけでなく重力なども頼りにしなければならない。
鳥はそれを命がけで学ぶのだ。
生まれたときから歩ける子供がいないように、生まれたときから飛べる鳥もいない。
本能に組み込まれた業を、生き延びるために学ぶのだ。出来なければ死が待つだけである。

鳥は生きるために空を飛ぶことを選んだ。その身体をつくりかえ、自らの種を残すために。空にロマンを感じて飛ぶ鳥はいない。

しかし人は鳥をみて、空を飛ぶことにロマンを感じる。鳥のように飛びたいと願う。
その願いは、人力飛行機を作り、ジェット機を産み、ロケットを飛ばせた。

今、科学は進歩し続けている。科学の力で人が鳥のように飛ぶことが出来る日も遠くないのかも知れない。ドラえもんのタケコプターが現実となるのだ。

けれどその日、私たちは鳥と共に飛べるのだろうか?私たちに夢を与えてくれた鳥たちと共に。

トキは飛べない鳥である。絶滅を危惧され、檻に閉じこめられた、舞えない鳥である。
私たちが自由に空を飛べるようになったとき、そんな飛べない鳥たちが増えていなければいい。共に大空で歌いたいと私は願う。

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