楽器ミュージアム


皆さんこんにちは。フルート山本恭平(きょうへい) です。
今回からアンサンブルのメンバーに順次登場してもらい、各パートの楽器の話をさせていただくことになりました。 興味ある話が期待できることと思います。どうぞお楽しみに。

 まず、フルートの話から始めさせてもらいます。
 フルートと言えば、皆さんもうよくご存じの、あのフルートをイメージされると思いますが、実はその昔、フルートというのは、たて吹きのリコーダー(ブロックフレーテ)のことをさして、そう呼んでいた時代もあるのです。
その当時はたて吹きのリコーダーがフルートで、今のフルートはそれと区別するため、横吹きのフルートと言う意味の「クヴェアーフレーテ」と呼ばれていました。ややこしいですね。
時代の変遷により、呼び名とその意味するものが変化するということの一例です。

 中性ルネッサンスの頃は、誰が吹いても同じ音の鳴る笛が好まれて、支持されていたのです。やがて人々は、人と違う自分に価値を見いだすようになってきます。
誰が吹いても同じ音の鳴る笛よりも、吹き手の個性が音に表れる横吹きの笛を求めるようになります。いくつかの改良が加えられた、木管の1キー付きフルートトラベルソは、モーツァルトの頃まで実際に使われていたことは、皆さんご存じの通りです。

 バロック〜クラシック〜ロマンと時代が移り変わるにつれ、横吹きのフルートも次第に人々の欲求を満足されることができなくなってきます。
 時代が求めたものは、より大きな音量、より正確な音程、より輝かしい音色でした。
 音楽が市民のものとなり、大きな会場での演奏会が開催されるようになれば当然のことだったのかもしれません。さらに音楽の本質からは無関係な、経済効率という考え方が入り込んできたために、この傾向は拡大されていきました。
かつてリコーダーがたどった道を、フルートも歩まざるを得ない状況になったのです。
 その後、工業技術の発達に伴い、フルートの製作技術も大きく進歩し、1847年に、ドイツのテオバルト・ベームによって新しいフルートが発表されました。ベームは作曲家でもあり、演奏家でもありました。ベームはフルートの管体を木管から金属管に変え、頭部管(奏者の吹き口の部分)を円筒から円錐に改良するなどして、いままでひ弱な発音体であったフルートの音量を飛躍的に増大させることに成功したのです。
ミュンヘン生まれのベームによって、フルートは息を吹き返しました。


現在のフルートにベーム以外の手が加わっているのは2つ(Gisクローズとブリチァルディキー)だけです。150年前のベームシステムが、いまだに通用しているのです。
 一つおもしろいなと思うのは、このすばらしいベームの価値をいち早く認めたのは、自国ドイツではなく、フランスだったということです。
ベームの発表とほぼ同時にフランスのメーカー(ゴッドフロイとルイ・ロット)が、フランスでの製作権利を買い取りました。イギリスでは、ルーダル&カルテ社が同じく権利を買い取り、ベームフルートは自国ドイツではなく、フランス、イギリスを中心に発展していきました。

現在は、管体の種類も、銀、金(9K,14K,3K)、プラチナとまぶしいほどです。価格も銀の60万からプラチナの700万とタメ息の出るものまであります。ジェームス・ゴールウェイやウイーンフィルのシュルツはプラチナを吹いています。世界中の多くのソリスト、オケマン達が日本のメーカーの笛を吹いています。今やわが国はフルートの名産地なのです。
 フルートの同族楽器によるアンサンブルも日本では大変盛んで、フルートオーケストラと呼ばれています。その関係で、低音域を出すためのフルートの研究・開発も盛んで、アルト・バス・コントラバスフルートなど大変よい楽器ができています。低音フルートに関しては、世界を大きくリードしています。

 機会がありましたら、例会でこれら低音フルートを入れたアンサンブルなども楽しんでいただきたいと思っております。

【フルートの項  終わり】


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