
『そして日常へ〜大阪まで16時間
みちのく一人旅'99その14』(2003/06/02)
今日はいよいよ帰る日だ。今朝は5時半頃に起床。6時半頃の遠野発の列車で一路、上野に向かう。少なくとも東京までは鈍行で行きたいと思っている。
6時過ぎに宿を出ると、昨日早々と店じまいをしていた駅がすでに開いていた。少し時間があったので、お茶を買おうと売店に行くと、多少の本も置いてあった。その中に気になる装丁の本があり、手に取ってみると「わたしたちの遠野物語」とある。上下巻の2冊あった。「?」中を見てみると地元の中学生が、遠野物語を知るために、文語調で書かれた原本を、口語訳に直したものと書いてあった。
これは読んでみたいなと思い、上下巻2冊とも購入した。(これでまた荷物が肩に・・・)
まもなく列車が到着した。まずは花巻に向かい、そこで乗り換えて、一ノ関を目指す。このころになると、あまり車窓の景色は見なくなっていた、時間があったので、この旅行記の原稿を書いている時間が長くなった。もう僕の頭の中ではすでに、旅行は終わりつつあったのだ。
ただ、ここ最近電車に乗ってるだけでなんか楽しいので、ちっとも苦にはならないのだ。
そうこうしているうちに、仙台に着いた。ここに来るとどうしても
「ひろっせがわぁ〜〜〜、ながれるきしべぇ〜〜〜
おもいではぁ〜〜〜かえらずぅ〜〜〜〜・・・」
と、さとうむねゆきの「青葉城恋歌」が頭に浮かび。思わず口ずさんでしまうんです。自分でもベタベタやなぁと思いながらも、パブロフの犬のように条件反射になってしまっています。困ったもんです。
乗り換えの接続の関係上、ここでは1時間ほど時間があります。カウンターテナーの達也さんも山形への旅行記で書いていましたが、僕もそれにならい、牛タンを食べようと店を探しました。そこが美味しい店かどうかはわかりませんが、仙台駅の地下食堂街にある店で牛タン定食を食べ、妙に納得して仙台を後にしました。
ところがここで車内が妙に混んでいるのです。客層も、なんというか今風の若い女性が妙に多いのです。旅行客という風情でもありません。「?」と思っていると、仙台から少し行ったところで一斉に降りていくんです。駅の外に目をやると、バスを待っているのか、すごい行列です。ますます「?!?」となりました。たまたま隣り合わせたおじさんが、事情を知っていたのです。
「あの〜〜なんだったかいな?スナップ?のコンサートがあるみたいですよ」と言いました。僕が心の中で「それいうんやったら、スマップでんがな」とつっこんだのは言うまでもございません。
そう、仙台郊外のスタジアムでSMAPがコンサートを何日か連続で行っているとのこと。今日は2日目以降のようで、車内には明らかに昨日コンサート聞きましたという風の女の子連れもいます。結局彼女たちは、青春18切符で東京方面から往復したようで、埼玉ぐらいまでは一緒でした。
おかげで車内が少々混んだのと、旅情に少し欠けてしまったかもしれません。
−恐るべしSMAP・・・・・−
栃木県を長い間通って、埼玉を通過し、ようやく列車は上野駅に到着しました。午後6時半を少し回っていました。結局ちょうど12時間かかったことになります。
こうして東京に降り立ってみると、ここもずいぶん見知った街になったなぁと感じてしまいました。どこをどう行ったらいいか分かってしまうんですよね。もう、何回目だろう?
ここから大阪へは新幹線を利用しました。まもなく旅の終わりです。しかし、問題なのは新幹線が一番乗り心地が悪かったということです。高い金払って、こりゃいったいどうしたことでしょうか?利点はやっぱり「速いだけ」です。目的地から目的地へ「効率良く運ぶ」と言う点しか見えてきませんでした。そしてこの旅の後だけにそれがよく分かりました。良くも悪くも実に「日本的な」乗り物ですよ、これは。
でも、逆にこの乗り心地の悪さが、僕を次第にいつもの日常へと引き戻してくれたように思います。新幹線は「観光」のイメージではなく「仕事」のイメージですね。
10時半過ぎ、車内でよく眠れないまま、新大阪に到着。僕の旅が終わりました。
不思議と疲れはありません。行く前よりも元気になった感じです。そして東北が少し好きになりました。
・・さあ、次はどこへ行こうか・・・
おしまい。

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