2000/10/10
<大阪コレギウム・ムジクム25周年記念演奏会・ 「人間について」へのお誘い>

(今回の担当:TEN.阿部 剛)

「人間について」は1984年に構想されましたが、実際には演奏されることなく作曲者 の没後、その構想から実に12年たった1996年秋にサントリー音楽財団コンサート「作曲家の個展’96柴田南雄」で初演が行われました。作品は次の3部構成からなっています。

第一部:「歌垣」(独立したシアターピースとしても演奏される)
第二部:「生の種々相」(柴田南雄の合唱作品からのコラージュ)
第三部:「人間と死」(独立したシアターピースとしても演奏される)

 第一部、他者を認め他人を「愛する」ことから人として出発し、第二部、多くの人 が同じ時を様々な「生」を通して謳歌していることを表現し、そして第三部、「生き ること」=「死ぬこと」という考えのもとに「死」に向かい合い、考えることが「人 として生きる」ことなのだということを示しています。

 シュッツ合唱団では第一部「歌垣」と第三部「人間と死」は演奏していて、すでに CD化されています(「柴田南雄 その響き氈v、完売)。我々にとっては第二部「 生の種々相」が初めて演奏することになるわけです。

 「生の種々相」は柴田南雄の40近く存在する合唱作品の中から、その部分部分を素 材として自由に選び、組み合わせることによって構成されます。つまり「生の種々相 」という楽譜は最初から存在しないのです。元々、柴田作品のシアターピースは指揮 者の裁量に任される部分が多いのですが、この「生の種々相」はそれを最大限まで拡 大したものといえます。シンフォニーホールの演奏会では第二部に次の曲を取り上げ ます。なにわ歳時記・追分節考・萬歳流し・三つの無伴奏混声合唱曲集・優しき歌第 二・遠野遠音・念佛踊・無限曠野 他。

 これまで、「人間について」は初演を含めて3回(東京、大阪、北九州)演奏され ていますが「生の種々相」は構成が、指揮者に任されているため、この3回とも第二 部の内容はそれぞれに異なっています。今回のシンフォニーの演奏が4回目、東京公 演が5回目の演奏になりますが、これまでの3回の演奏とはまた違ったものになるで しょう。それは、人間が持つ多様性を表現するかのように。つまり10月19日シンフォ ニーホール、11月8日カザルスホールでの「人間について」はこの日この時限りの、 「人間について」だといえるのです。

 加えて,今回のシンフォニーホールの演奏では、当間修一と音楽を通して関係のあ る合唱団との共演が実現しました。以下の合唱団です。

大阪ハインリッヒ・シュッツ室内合唱団
大阪コレギウム・ムジクム合唱団(大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団改め)
京都C.モンテヴェルディ合唱団
和歌山バッハコール
女声合唱団りんどう
女声合唱団コーロ羽衣
大阪府立大学・大阪女子大学合同混声合唱団エヴァ・コール

 第二部「生の種々相」では、これら7つの合唱団が一堂に会します。これまでにな い響きの世界を体験していただけることと思います。この機会を逃すことなく是非足 をお運びください。


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