2007/3/21
<「演じるも幸福なり 〜シアター・ピースの魅力〜」>

(今回の担当:Bas.園田恭弘(「シュッツの会便り」より転載))


 シアター・ピースとは、古典的な形式や様式(オペラやバレーなど)にとらわれることなく、劇場空間全体を場として音を奏で演じる表現形態であり、柴田先生はこのスタイルを多くの作品に取り入れています。今回の名古屋公演で演奏する「人間と死」の第2章は、このシアター・ピースの形式で書かれています。

 シアター・ピースの演奏をするときは、演奏会の直前までいろいろな演奏者の配置や歌い方を試し、声部の混ぜ合わせ方やバランスに工夫しながら、その会場ならではの響きを模索していきます。当間先生の指示が飛び交い、合唱団員からもアイデアを出しながら作品を創り上げていく喜びは、他では得難いものです。また本番では、お客様のすぐ横で歌うようなこともしばしばで、時には冷や汗をかきながらも、大勢の合唱団員の一人としてだけではなく、一人の演奏者として自立して演じる喜びを存分に味わっています。
 ところで、シアター・ピースといえば今も鮮明に思い出す一つのエピソードがあります。2年半ほど前のことですが、大阪・和泉市の「弥生の風ホール」での演奏会に際して、前日のリハーサルでホールに初めて足を踏み入れた合唱団員から誰彼なく口をついて出た言葉は「シアター・ピースができそう。」

 全体がたまご型で1階の客席を囲むようにバルコニーが設けられ、残響も豊かなホールを一目見て、みんなも当間先生も思いは一致しました。果たして、まったく予定になく、楽譜も持ち合わせていなかった柴田先生のシアター・ピース第一作「追分節考」を練習し、なんと翌日の演奏会のアンコールにしてしまったのです。

 今回の「しらかわホール」もその響きの良さとバルコニー席の形状などからシアター・ピースの演奏には最適と思われます。グレゴリオ聖歌並びにその音素材で構成される西洋の響きと、理趣経、梁塵秘抄などの日本の響きが交錯してどのような音世界が生まれるのか、今からとても楽しみにしています。どうぞ御期待ください。


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