(趣味の本や仕事に必要な参考本、そして《「私」が生きていくための本》など様々です。その中で特に感銘を受けたものをご紹介したいと思いました。私の音楽とやはりリンクしているだろうと思います。)
音楽の感動を科学する
ヒトはなぜ”ホモ・カントゥス”になったのか
化学同人
「感動」というものを科学として捉える。
刺激的、しかし納得の内容です。
既に私にとっては経験的に知っていたことのように思います。
ただ、音楽の感動を”科学”として捉えようとの研究が本格化していることを知ったのは喜びです。
各章のまとまりに私は少し戸惑いも感じましたが(重複する内容)、一気に読み終える刺激的な本ではあります。
演奏家も聴衆も一読をお薦めします。
新約聖書 訳と註1 マルコ福音書/マタイ福音書
待望の全集が刊行中です。
第一回配本「パウロ書簡 その一」が既に出版されています。
いつごろか原文に忠実、的確な日本語訳の聖書の刊行を望むようになっていました。
そのことに気づかされ、聖書を読む際の「読み解き」を教えられたのは田川建三氏の著書からでした。
この偉業、ただただ感服するばかり。私には文章の行間からスッキリとした眺望と著者の思いが炎となって迸っているように見えます。
全巻の購読をお薦めします。
日本語の泉
著者は「むすび」で書きます。
「かうした小さな一冊の本ではありますが、これによって古代日本語の精妙な美しさ、整然とした姿を、幾らかはお見せすることができたのではありますまいか。この小さな一冊の本によって、日本語に対する認識をあらたにしてくださつた人が多ければ、それはわたくしにとつて大きな喜びです。また、日本語を愛護しようといふ思ひを一段と深くしてくださつた人が多ければ、これもわたくしにとつて大きな幸ひです。」
随想風日本語論です。
その面白さに興奮を覚えながら一気に読んでしまいました。
一読をお薦めします。
子ども中心主義の大きな過ち「その子育ては科学的に間違っています」
電車の中やデパートなどの雑踏の中、公の場での小さな子供たちの傍若無人の振る舞いを見て考えさせられることが多くありました。
当の子供たちもそうなのですが、側で何もしない親たちに驚き、且つ危惧を抱いていた私。
これまでにも子育てについては色々と意見を持っていた私です。
《落ち着きがない。いうことを聞かない。協調性がない。規則を守らない。身勝手である。すぐに腹を立てる。暴力を振るう。根気が無くて辛抱や我慢ができない。忍耐力がない。あきやすい。やる気がない。自己抑制力に欠ける》(本書からの引用)
それらが何故起きたのか?私の思いとほぼ同じことが書いてある書物に出会って少し嬉しくなってしまいました。
「子ども中心の子育て」はやめましょう、とのことなのですが私も賛成です。
歴史的な流れを解説している章はなるほどと納得。
こんにちの0歳から40代に共通する問題。
これからは脳科学に沿った子育てを。
一読をお薦めします。
「17歳のための『世界と日本の見方』」
「ここではきものをぬいでください」「いやよして」
さて、この文章どこで「、」を打ちます。
面白い!
こう始まるんですね。ギュッと心を捕まれてしまいました。
「17歳のため」とは銘打っていますが、いやいや50代でも面白かったです。
人間と文化の関係を解りやすく解きほぐしていきます。
歴史的な出来事の情報も豊富で、私など随分記憶の空白部分を埋められました。
結論の「バロック的思考の重要性」は日頃私が言っていることと同じだったこともあってちょっと拍子抜けの感もありましたが(最初の読み始めのインパクトと比べて)、その内容は説得性に富んでいます。(宗教との関わりの記述がまたいいですね)
「日本という国」
YA(ヤングアダルト)新書
「学校でも家でも学べない、キミが知りたい、リアルでたいせつな智慧が満載!!」というキャッチフレーズで刊行されています。
中学生以上を対象としていることで、この本に出て来るほとんどの漢字にルビが打ってあります。これも必要なんだと変に感心して手に取りました。
最近、この国は何処へ向かっているのか?と思うコトしきりです。
テレビに流れているニュースや情報も私にとっては「???」、疑問だらけ。
若い人たちに画一的な、偏った歴史観ではない良い本はないものかと思っていたところでの出会いでした。
明治から戦後までの流れを実に明快に書き進めていきます。特に最初に出て来る福沢諭吉のあの有名な<天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずと云へり>という『学問のすゝめ』の章は面白い。
「イエスという男」(第二版〔増補改訂版〕)
〔増補改訂版〕としての出版です
私が30歳代に突入した頃初版が出版されています。それは衝撃的な出会いでした。
その時、どんなに驚いたことか!
クリスチャンとしての道はこの本との出会いで決定的となりました。
それにしても、その頃のこの本に対する周りの(クリスチャンの人々)反応は意外でした。
ほとんど無視か、話題になりませんでしたね。冷ややかでした。
この第二版を読み返して、あらたにその内容の凄さに驚いています。
著者、及びこの本との出会いは私の人生の中でも最も重要なことの一つとなっています。
「キリスト教思想への招待」
待ちに待った本です。
久しぶりに興奮しながら読んでいます。
私の30年間にわたるキリスト教とのお付き合い、教会オルガニストの経験を語ることが、キリスト教批判、キリスト教嫌いのように受け取られてしまう私ですが、ここに書かれていることがキリスト教の確信だと思っている私です。
いつも「田川建三」の著書に勇気や大きな希望を頂いてきました。(こういう方が同時代に居られるということだけでも生きていて良かったと思いますね)
頭の芯を揺さぶられながら読むのは久しいです。
「偉大なる普通人」
(ほんとうのベートーヴェン)
視点と文章が変われば今までのイメージがこんなにも違うものになるのだ。
「その通り」と何度もうなずきながら読みました。
こんな本を誰かが書いてくれないかなぁと思っていたので私としても大いに推薦!
書店には置いていないところもあるというので探し回っている人もいるとか。
とにかく痛快に、そして楽しく読みました。
「日本人の歴史意識」
(「世間」という視角から)
「日本人のためのクラシック音楽入門不思議な国のクラシック」
鈴木淳史 著
青弓社
(定価1600+税)
「もしかしたら、触れてはいけなかったことなのかもしれない」と作者があとがきに書きました。
自分でも重苦しい内容になってしまった、とも書いています。
どんな内容かはお読み頂きたいのですが(文書は実に読みやすく、解りやすく、そして楽しく読めます)、私が指揮者になってから思い悩んでいることと多くが重なります。
私としては氏のような「聴き手」としてではなく、演奏する側に立つ者ですからその悩みもひとしおです。(笑)
しかし、これほど日本の「クラシック音楽」の現状を解き明かした本はないと思います。
お読みになって「暗い気持ち」にならなければいいが、と著者と同じように案じる私です。(笑)
「バッハとの対話(バッハ研究の最前線)」
小林義武 著
小学館
(定価3800+税 計3.990円)
さて、再会第一冊目は小林義武氏の著書です。「バッハとの対話(バッハ研究の最前線)」。
二十年以上にわたるバッハ研究の最前線での研究生活。現存するほとんですべての自筆譜を手にされたというその経験は驚きです。(何という幸福なことでしょう)
平易な文章ながら、研究家としての貴重な体験、そして最新のバッハ研究の成果が綴られています。
私など、読みながらバッハの日常が目の当たりに繰り広げられような久しぶりの感動を味わいました。
バッハ・ファンの方々にとっての待望の書です。
「東大で上野千鶴子にケンカを学ぶ」
遙 洋子 著
筑摩書房
(定価1400円+税)
しばらく、上野千鶴子さんの著書を読む機会が少なくなっていました。(一時期集中して読んでました。世の中、上野千鶴子アレルギーなるものが今もあるらしいですが、私は好きです)
上野さんの教授ぶりが遙さんの目を通して書かれていて面白いです。
文章も良いですね。一気に読んでしまいました。
この本、フェミニズム社会学の一端を取っつきやすく、平易に垣間見せてくれます。言葉の選び方なども学んだ成果でしょうね。朝日新聞などにも連載を始めている遙さん、今後が楽しみです。
「うるさい日本の私、それから」
中島義道著
洋泉社
(定価1600円+税)
読んではいけないものを読んでしまった。それが読書の感想でした(笑)。
「著者の戦いに読む者も思わず「ため息」が出ます」と、このページでもご紹介した「うるさい 日本の私」の続編です。
行くところへ行ってしまったと思われる結論。これはもう壮絶なものです。そして、私もそれに同調してしまうんです
街に溢れる騒音の排除を訴えることから発した著者の戦いは、深く日本人そのものの問題へと向かいます。
第4章の「日本人の『からだ』」に書かれている日本人の自然感になっとく。
とにかく、読むには少し勇気がいるかもしれません。
しかし、お奨めです。
「あなたの手のひら」
(花の詩画集)
星野富宏
偕成社
(定価1400円+税)
最新刊の「詩画集」です。今回載せた詩画は各地で開いた詩画展で展示したもののようです。しかし、この本を出版するにあたって新たに色をたしたり書き換えたりしたと前書きで書かれています。
視座を変えることによって私たちはより広く、そして深く感じることが出来る。私は彼の詩画集で「花」とそして「人」を想うのが好きです。
「日本社会で生きるということ」
(さまざまな問題の根底に何があるのか?)
阿部謹也
朝日新聞社
(定価1400円+税)
ドイツ中世史の専門家である阿部氏の著書は昔から愛読していました。このページでもご紹介した本が多くあるのですが、それがなかなか進まないでいました。
この本は最も新しい氏の著書です。
日本の「世間」がそのテーマです。なるほどと納得させられます。
以前から私などはこれらのことで悩んだこともあり(日本には「人権」や、「個人」という意識が無いのではないか?)、共感するところが多々あります。
読んだ感想からはもう少しはっきりと自己主張されても良いかとも受け取られる箇所もあるのですが、それは日本での公的な要職にもあった氏の偽らざる真の経験からの内容なのかもしれません。
学者の立場としてそれは見事な分析、そしてバランスのとれた内容かと思います。
是非お読み下さい。
「沖縄からはじまる」
(言葉による沖縄型民主主義をつくりたい)
大田昌秀・池澤夏樹 対論
集英社
(定価1785円)
私たちはあまりにも「沖縄」のことに無関心なのかもしれません。
「沖縄」のことはメディアにもあまり登場しませんね。
また正しく県民の意見も伝えられていないように思われます。
この本は県知事の大田氏の肉声が聞こえてきます。またそれを通して沖縄の実情が語られています。
私は読みながら何度も絶句しなければなりませんでした。
また、涙してしまいました。
池澤さんの「前書き」も素敵です。
是非お読み下さい。
「うるさい日本の私」
(「音漬け社会」との果てしなき戦い)
中島義道著
洋泉社
(定価1700円)
痛快です。そして痛々しいです
著者の戦いに読む者も思わず「ため息」が出ます。
二年前(1996年8月)に出版された本で、「天声人語」や各紙で評判となった本です。
日本人は結局、<管理されたい>人たちだと著者は言います。
そしてこれからは、「我々は『言われる』ことにもっと馴れ、言われたこと自体にではなく『言われた』内容に向けて反論することを学ばねばならない」と提唱する。
街に溢れる騒音の排除を訴えることから発した著者の戦いは奥深い問題へと発展していきます。
とにかくお奨めの本です。是非お読み下さい。
「コロンブスが来てから」
(先住民の歴史と未来)
トーマス・R・バージャー著 藤永 茂訳
朝日選書 464
ここに書かれていることは他国の問題ではない。実は私たちの問題でもある。
<過去>の出来事ではなく、いまなお続いている<現代>のことでもある。
考えさせられました。この本を是非お読み下さい。
訳をされた藤永 茂氏の「訳者あとがき」を先にお読み下さい。
この部分だけでも読む価値はあります。
「絶対音感」
最相葉月(さいしょう はづき)著
小学館
誰もが気になる絶対音感。音楽家には絶対音感は必要なのか。そもそも絶対音感とは何か?
その謎を解こうと著者は取材を始めます。
「絶対音感」に興味のある人は読んでみて下さい。
読み終わった後は「人間の奥深さ」、まだまだ解明されてはいない諸問題に気づかされ、思わぬ世界が広がります。
「色々な色」
監修_近江源太郎
構成・文_ネイチャー・プロ編集室
光琳社出版
私は幼い頃から「色音痴」ではないかといつも疑っていました。
きっとこれは色の話を友達などと話していると、必ずといっていいほど色の名前を訂正された経験によっています。それ以来色の話は恐怖となっていました。
頭の中で見ている色と、それに付けられた名前が一致しなかったのです。これは絵本などで色と名前を教えて貰わなかったからかもしれません。
この本は自然の草花や風景などを通して色の名前を考えさせられる本です。
新鮮な驚き、深い感銘を受けました。お勧めです。
「宮沢賢治・時空の旅人」
(文学が描いた相対性理論)
竹内薫/原田章夫
日経サイエンス社
賢治のファンの皆さんにも物理学に興味のある方にもお奨めできる本だと思います。
柴田南雄の「自然について」を練習するために参考にした本です。難解な賢治の詩がすっきりと理解できました。久しぶりの感動を味わっています。
是非皆さんも賢治と相対性理論の結びつきを想像して下さい。
「音のなんでも小事典」
(脳が音を聴くしくみから超音波顕微鏡まで)
日本音響学会
講談社 Blue Backs
私が「合唱講座」で書いていた「音の不思議シリーズ」に参考にしていた本のうちの一冊です
音に対して様々な角度から述べていて面白いです。
私の「音の不思議シリーズ」はこれからも続きますが、是非この本も参考にしていただきたいと思います。
ご紹介したい本です
(一度読んでいただきたい本です)
「アリーテ姫の冒険」
ダイアナ・コールス 作
学陽書房
ふとこの本を思い出して読んでみたくなりました。90年の3月1日に朝日新聞「天声人語」に紹介された本です。原題は"The
Clever Princess"です。絵本なんですね。
帯に「待ってるだけのお姫さまはもう古い」と書かれているように、イギリスのフェミニストたちが小さな女の子のために書いた本です。久しぶりに取り出して読んだのですが、面白かったです。ここに登場するお姫さまなら一度お付き合いしたいなぁ・・・・・
「書物としての新約聖書」
田川建三 著
勁草書房
私のレパートリーの多くが宗教曲にあるため、聖書関係の書物はよく読みます。盲目的な解釈、演奏に陥らないように多くの書物からヒントを得たいと思っています。田川建三氏の著書はこれからもここに登場してくる筈です。以前書かれた本で私の座右の書となっているのがあるのですが、それは後にご紹介します。この「書物としての新約聖書」は現在出版されて話題書であるので紹介しました。実に教えられることが多いです。この本も私の座右の書になりました。聖書の成り立ち、言語、写本、翻訳を詳細に解説しています。定価が8000円です。少し高く思われるかもしれませんが、内容からして決してそのようなことはないと思います。読み進む程に聖書の変遷を通じて人間の文化史も見えてくるはずです。
「ワイン生活」ー楽しく飲むための200のヒント
田崎真也 著
新潮選書
Q&Aのスタイルで書かれていて解りやすいです。私は2〜3年に一度お酒の本を読むようですね。これが結構面白いのです。書店で手にしたこの本は、7月にドイツとイタリアへ行くことと関係があるようです。余り意識したことはなかったのですが、たぶんそうに違いありません。手に取って「はじめに」を読んで惹きつけられました。ワインに関しては何かと窮屈な印象を受けていたんですが(作法をいろいろいう人が多いですね)、著者はこう書いていたんです。・・・・・・声を大にして言いますが、こと飲食に関しては、決まり事など本来ないはずです。・・・・・・・いいですね、その通りだと常々思っていました。読んで今までの疑問が晴れていっています。特に<料理との相性>は示唆に富んでいますし、読みながら「うん、うん」と一人ほくそ笑んで読んでいます。