No.535 '03/12/30

「袖触れ合うも多生の縁」


旅をしていていつも思うのですが、世の中色々な人がいるものです。
人に関心があるものですから、それらを見ながら考えます。
野望は日本中を旅することなんですが、それはたぶん無理でしょう。
でも、機会を見つけてはのんびりと、また様々な出会いを楽しみにして旅したいと思い続けている私です。
これまで着々とそれの実現を追って旅してきましたが(できるかぎり仕事でなく、もし仕事であっても私的な時間を作って回りたいと思っています)、その度に考えさせられる出会いが多いですね。
土地には表情があります。人の表情も様々。言葉など顕著ですね。
そういった旅先もそうなのですが、旅路の出会いも面白いです。
人ってちょっとしたことで幸福にもなれるし、暗く寂しい、嫌な気持にもなれます。
できれば後者でなく、「幸せな気持」になるような出会いをしたいですね。

今回の旅行、大阪から新幹線に乗った時のことです。3人掛けのシートでの指定席、通路側に女性客(中年の方ですかね)が既に座っていて、私が窓側、連れの仲間が真ん中という席になりました。
こういう時一瞬緊張が走ります。(最初から座っていた人が良い感じだったらいいなぁ〜、ってなもんですね)
ちょっと会釈をして前を通って席に座ります。(その方、挨拶を返してくれた上に気持ちよく足をよけてくれます)
ちょっと一安心して座ったのですが、座った後ちょうどお昼時だったもので、買っていた弁当を広げて「お昼ご飯」です。
これもちょっと控えなければ、と思いつつ、お腹が空いていたこともあって二人で目の前で食べ始めました。
包み紙を広げる音、蓋を開ければプーンとお弁当の香り、くちゃくちゃと食べる音、私だったらちょっと「やめて〜よ」てなもんです。
その通路側のお客さん、ちょっとこちらの様子をうかがって席を立ってしまったんですね。
「やっぱり、もう少し遠慮がちに食べなきゃね」と反省。
なかなか帰ってこないんです。・・・・・・・・・・でしばらくして現れたのですがなんと手には車内販売の「お弁当」!
・・・・・・・・・・。
この方、我々が名古屋で降りるとき、動きをさっしてか今度はサッと立ちます。「さあ、どうぞ」とばかりに我々を通路へ出させて下さったのですね。
会話は交わしていないのですが、その振る舞いの中になにかホッとさせるものを感じます。いや、最高のユーモアさえ感じました。(どんな職業の方だったのでしょう?聞いてみたかったですね)
この方のお陰で旅の出発は気分よかったです。

さて名古屋から「しなの」に乗って塩尻まで。
座席に座ろうとするとある目線に気が付きます。
じっと睨み付けるように見られているのですね。
「あなたたち何者」とばかり睨んでいるんです。
席が前後ということもあって、直接には対応しなくて済んだのですが、何となく気になって居心地が悪いんです。
「袖触れ合うも多生の縁」をと私は思っているのですが、こういうの嫌なんですね。
この後も見張られている感じで窮屈。何か悪いことしたかな〜、なんて考えながらその女性の目線が気になってしかたがありません。
「うるさいから退いてよ!」「何故か邪魔!」ということなんでしょうか? その女性がどうしてそんな目で私たちを見ていたのか?未だに謎です。

「東京公演」の後に行って気に入ったお宿、上諏訪の「油屋旅館」へ再び出掛けました。
お湯が良し。しかし、再度訪れたのは客へのサービスがいいから。
気持の入っていないリップサービスの応対ではなく、ホントに仲の良い人たちばかりだと思わせるその会話の中に、心通じるサービスを感じるからなのですね。
ちょっとした応対にそう思います。
目を見て、しっかり対応するのですね。しかもどこかユーモアがあるんです。
これはもう客にとって見れば最高のサービスです。
その上、今回、前回食べられなかった夜の食事も美味しいことが判明。
広めの一室に用意されたその食事、雰囲気が良く、静かに、ゆっくり・・・・・・。
仲居さんの接客も的を得ていて気持ちが良かったですし、
料理はトリ鍋を頼んだのですがこれがまた美味しかった。(お酒もうまかったんですよ)

何故、旅が好きになったか?(初めはあまり好きではありませんでした。出不精だった私です)
体験することの大切さをどこかで知ったのですね。
体験していない情報は時間が経てば忘れてしまうもの。
自分で体験したことは忘れないものです。(この尊さに気付きました)
人間の一生で体験できることはそう多くはありません。
それならば出来るだけ多く体験したい。もっと知ってみたい。
そう思ったのですね。

昨今、体験でなく情報で物知りになった人が多くなっているような気がするのですが、「身に付く」、「解る」とは体験を通じてこそ得られる、と思う私。
人生、後半に差し掛かり益々「体験すること」に興味津々となりました。

「さのさかスキー」が始まりました。
さて、今年もどんな出会いがありますことやら・・・・・・・・・・。

No.535 '03/12/30「「袖触れ合うも多生の縁」」終わり