この間「探偵ナイトスクープ!」で‘ハヤブサが見たい!’という依頼があった。それを見ていて中学の時たった一度だけ見たハヤブサと、それにまつわる鳥見旅行のことを思い出した。
あれは中学3年の時だったろうか。タカ類であり夏鳥であるサシバの渡りを見に行きたいと思った。本州でそれが最もよく見られるのは愛知県の伊良湖岬。渥美半島の先だ。
そこに行くには泊まりがけになることもあって、結構費用がかかる。中三の財力では全然足りない。そこで私は親に「一学期の成績五教科(国数英社理)で全部5取ったら、お金出してくれ」と頼んだ。「いいよ」と言われたので私は頑張った。当時から私は英語が苦手で、3までしか取ったことがなかった。いくらやっても頭に入らない英語に悪戦苦闘した。
結果、国数社理は5、英は残念ながら4だった。しかし意外なことに技術科で5を取ることが出来た(技術科で5を取ったのは後にも先にもこれ一回きりであった)。
「まぁいいか」で私は伊良湖岬に行く許可とお金を得ることが出来たのである。
渡りの時期は秋。私は中学生。必然、行くのは土日となる。
十月の最初の土曜日、学校から帰った私は一路愛知県伊良湖岬へと旅立ったのである。
せっかく愛知に行くんだから他の探鳥地も行くべぇ、と渥美半島の途中、汐川という所に寄った。干潟であり、秋には渡り途中のシギ類で賑わうところだ。
私はシギ類の見分けがつくほど達者なバードウォッチャーではなかったので、どんなのが居たのかよくわからなかったが、それでも京都ではあまり見られないシギ類達を見て十分楽しむことが出来た。
そしてホテルに泊まり、次の日、いよいよ朝から伊良湖岬でサシバだ!というところであった。
しかし朝から天候は悪く、雨が降ったり止んだり、風が異常に強かった。しかしここまで来てやめられない。私は岬へ向かった。
岬に着くと、風は強いままだったが、雨は止んでいた。
ある民宿の屋上でバードウォッチャーが集まり、サシバなどの渡りを観察していたので、私もそこに混ぜてもらった。
やはり悪天候のせいか、あまり飛ばない、という話だったのだが、それでも次から次へとサシバが現れる。「ピックイー」という独特の鳴き声も聞こえる。私は興奮し、その姿を見つめ、写真に撮り、また見つめた。そんな時である。
「ハヤブサだ!!」
バードウォッチャーの一人が叫んだ。
サシバの舞う空に一筋の閃光。ホンの一瞬。だが確かに見た。信じられないくらい速かった。風のようだった。
これを見たあと、私は伊良湖岬を去らねばならなかった。
この伊良湖岬はサシバだけでなく色々な鳥が渡りの通過点としている。小さな鳥を狙ってハヤブサが現れることもあるようだ。
しかしわずか半日の滞在で、獲物を狙うスピードを出すハヤブサに出会えたことは幸運であった。胸が熱くなった。
テレビに映るハヤブサとそれを見る人達を見て、その時の胸の熱さが甦ったような気がしたのである。
00.2.6