No.182 '98/9/28

演奏旅行「まとめ」


ドイツ演奏旅行、およびオプショナルツアーの報告が長くなってしまいました。
それだけ、私たちにとっては<印象深い>ものだったと思っていただければ嬉しいです。

報告の中でも書きましたが、私たちがドイツに行く第一の目的は<聴衆 >がいて下さるからです。
結果を先にいうならば、今回の演奏を通じてまた、<再度、訪れて下さい>というお誘いを各地から受けることになりました。

演奏会での一曲ごとに驚きを示して下さる聴衆に励まされ、音楽する喜びを体一杯に染み込ませるといった毎日。
日本を離れて3週間ほどは、<音楽漬け>。音楽三昧だったわけです。
合唱団はただひたすら<演奏>のことだけを考えて、<練習>および<体調を整える>という日々です。
そしてその苦労は聴衆の反応によって、<報われた>という実感へと変わったのでした。
ここちよい疲労感と興奮を伴っての毎夜の就寝でした。

しかし、このようにいい演奏旅行だったにもかかわらず、行くためには団員の金銭的な負担はいつも私の頭を痛める問題です。
<招待>されたとはいえ旅費は負担せざるを得ません。
50〜60人が行くとなると総費用は2千万ぐらいかかります。
それをドイツ側で全部まかなってもらうのは現時点では無理です。(ドイツの経済状態は今大変です)
費用の中で一番高いものといえば<航空運賃>です。(これはべらぼうに日本は高いと思います。割高になるお盆の時期ということはありますが。)
現地での滞在費はそう大したものではありません。日本に比べると安いものですね。

私たちの演奏会には<出演料>が出ます。
この出演料のみで滞在費を全部まかなうことはやはりできませんが、相応にみあった額を頂いています。
去年の演奏旅行は全て<出演料>が出ました。
しかし、今回の演奏旅行ではMDR以外は献金によったのです。
つまり、会場ごとの入場者数、献金額によって<額>が変わるのです。
主催者側は一様に<申し訳なさそう>な顔を私たちに見せます。
リハを聴いた後、そして演奏会後にはいっそう強く皆そうでした。

しかし、私は今年<この条件>で引き受けたのでした。
今度の演奏旅行がそれに勝るほどの有意義な経験になるだろうことを予想したからです。(この形での演奏旅行は今年で一応終わります)
それは我々の演奏に対する聴衆の反応の再認識、再確認によって、ある確信を持てると思ったからです。

本題の<まとめ>です。
我々のプログラムはルネッサンスから現代までと広いものであることが特徴です。
ある特定のジャンルの演奏団体ではないということですね。
我々は、<合唱>を通して「合唱芸術」を追求する団体だと解っていただいたと思います。
演奏を通して「文化史」や「民族性」「精神史」などを意識しながら「合唱活動」をしているわけです。
また、日本人の演奏家が日本の作曲家、あるいは日本文化を伝える作品を演奏するのは当然だと考えます。
その意味で、これまでの演奏旅行を通して「柴田南雄」を紹介できたことは私の誇りです。
。 「宇宙について」や「追分節考」はドイツの聴衆に多大な驚きと共に感動を与えるものであったことが確信できました。
これからも日本の作品を紹介しつづけようと思います。

当たり前のことですが・・・・・
CDやテープやビデオなどによったものより、直接聴いてもらうのがいいですね。
多くの関係者の方にお会いしました。大変お世話になりました。
旧東ドイツの事情も垣間見ました。
オプショナルツアーでは私たちのパフォーマンスが多くの人々を巻き込みました。
それを受け入れる度量の大きさを感じました。
風土や気候が生活や文化の違いを作ることを肌で感じることができました。
<文化>さまざまです。
<人間>も様々です。
しかし、<相互理解>の歩みは確かでした。
そして、<人間の温かさ>は共通でした。

No.182 '98/9/28「演奏旅行<まとめ>」終わり