No.236 '99/9/26

中部コンクール・中学・一般


コンクールの2日目です。

午前中は中学校部門、そして午後からは一般部門でした。
とにかくレベルが高かったです。審査する方としては少し悩みましたし、疲れました。

中学校部門では<混声の部>「長野市立東部中学校合唱部」が一位になりました。
評は分かれましたね。上位と下位に分かれてしまったようです。(この日審査員の評はどれも分かれてしまいました)
私は、声の明るさ、言葉の明瞭性によって好感をいだきました。その声は芯があり、力強かったです。
また、指揮も無駄が無く表情付けも自然でした。(過度の表情付けが他の指揮者に多かったです)
なによりも感心したのは、調性によって声の色が変わったことです。当然表情もかわります。これで私は一位としました。

中学校<同声の部>では「岡崎六つ美北中学合唱部」が一位でした。
私は4位(9学校中)をつけています。
メリハリのある発音、そしてリズム。洗練された声、そしてまとまり。
各パートも優劣無くバランスが良かったです。
私が一位をつけたのは「名古屋市神沢中学校」(結果は二位でした)。
芯のある明るく力強い声で、PPも美しく、表情の<大人>を感じさせました。
これは言葉のニュアンスに配慮した細やかな強弱の変化の結果だと思います。それが歌う中学生自身の生きた言葉になっていたわけです。強く印象に残った演奏でした。

中学はレベルが高かったですね。ほんと「巧い!」という感じです。
しかし、正直「これでいいのか?」という疑問もうまれました。
中学の演奏では指導者(指揮者)が<全て>になってしまいます。
指導者の評が結果となりやすいのですね。不自然な歌い回しと表現。音楽が<癖>のあるものとして生徒たちに刻み込まれなければいいが・・・・と思いながらの審査でしたね。

さて一般の部です。
Bグループでは「岐阜 Ensemble F」が一位でした。
これ私困ったのでした。
ここを振った指揮者のことで悩みましたね。才能豊かな指揮者であることは確かです。
この指揮者、他にもこの日2つ振っています。
とにかく、その音楽に対する集中度、そして合唱表現、声に対してもその魅力、美しさを十二分に引き出してしまいます。
申し分ないように見えるのですが、「コンクール」という場にあって彼のつくる音楽に少し悩みました。
この団体の自由曲は「浮舟」(西村 朗)から「浮舟」だったのですが、演奏はこの世界を良く表現していましたね。各声部のバランスも良く、声も美しく、まろやかさの中にも力強さがあり、ダイナミクスも適切で、<恋に悩む女><死を決意した女>を巧く表現していました。しかし、なんですね。そのテンポの取り方、アゴーギクが楽譜を離れてしまっているのです。合唱指揮者にありがちな過度の(強調しておきますね<過度の>)伸び縮みが見られるのです。
演奏会としてなら<個性>として、<解釈>として聴けるのですが、「コンクール」という「場」では、と悩んでしまったんですね。
この指揮者に関しては後でも触れると思います。
私はこの団に4位(9団体中)を付けています。(同指揮者がこの部門で振ったもう一つの団、「合唱団 まい」には3位をつけました。彼のすぐれた音楽性がストレートに良い方向で表れていたと思います)
この部門で失格となった「女声合唱団 杏」が残念でした。私はいろいろと課題も感じながらでしたが、2位を付けています。少人数でありながら魅力的な音楽作りをしていましたね。
この部門で私が一位をつけたのは「EST」でした。課題曲、自由曲の出来のバランスが良かったこと、自由曲の演奏に表れていた適切な解釈(シュッツ、トルミス)によってです。(ただ今後のために少しアドバイスをすれば、ふくよかな明るい声は良いのですが、声の立ち上がりが少し弱いように思います。これでは輪郭がぼやける恐れがありますね。現に課題曲でそれを感じました。男性のピッチも少し乱れたところはありましたが、とにかく全体に自主性のある真摯な取り組みが感じられる好感のもてる演奏だったと思います。

一般の部Bグループです。
一位は岐阜「合唱団 まりもあ」です。
例の指揮者が振った合唱団(<例の>とは失礼かな?)です。
またもや悩みました。(悩ませてくれるのは良いのかも知れませんね。問題提起をして頂いているわけですから)
楽器、三弦とコントラバスを伴っての演奏です。曲は「をとこ・をんな」(新実徳英)。
演奏は良かったです。合唱・楽器共巧く、唸らせた演奏でした。ここではテンポも適切で(楽器があったからでしょうか)、彼の意図も上手く働いて好演でした。
しかし、なんですね。
楽器を伴って演奏するということは少し考えなければいけないと思っているのです。
(誤解のないように、私は楽器を入れていく、楽器を伴った演奏がもっとあっていいと思っている推進派です。何度も言うようですが、現在の「コンクール」の場でそれを用いるにはまだ全体のコンセンサスが取れていないように思うのですが、どうでしょうか。大半の出場団体はア・カペラで挑んでいます。楽器を伴うにしてもピアノという共通した楽器を伴います。条件が同じということですね)
楽器を伴っての演奏、特に共通でない、珍しい音(この場合3弦、そして独奏としてのコントラバスです)の世界は「色物」の様相が濃くなるわけです。
現在の「コンクール」の中でこれをどう評価するか、私は少し困惑気味です。
作品の性格上、楽器の用いられ方が合唱をサポートするといったものでは無かったことが少しもの救いでした。(内容における感情の表現として「音」が用いられていました)
私はその意味で2位を付けた次第です。

疲れました。
しかし、演奏がりっぱなもの、聴き応えのある団が多かったせいか充実感はありましたよ。

長野駅、19時30分発の列車に飛び乗り、4時間かけて大阪に戻ってきました。
戻って何をしたと思います?
新大阪駅から「焼き肉」へと直行です。
お腹いっぱい食べました。
元気の出る「コンクール」ということなのでしょうか?
とにかく刺激的な(演奏の中身は当然ですが、「コンクール」のあり方を考える意味でも)2日間ではありました。

No.236 '99/9/26「中部コンクール・中学・一般」終わり