No.389 '01/10/6

「邦人合唱曲シリーズ」の録音


「邦人合唱曲シリーズ」の演奏会が終わっているのですが、その報告が遅くなってしまいました。
遠くから駆けつけていただいたお客さんもあったとか、本当にありがとうございました。
直ぐに演奏会の感想を書こうと思っていたのですが、録音のテープを聴いてからとの思いから、今となってしまいました。

今日、テープを合唱団員と共に聴いたのですが、その結果CD制作を予定通り着手することに決定しました。

演奏録音は念のためゲネでもしていたのですが、やはり本番でのライブが断然乗りも良く、CDに収録をしたのは一曲を除いて全て本番での演奏でした。
その一曲とは千原英喜さん作曲の「おらしょ」、これはお客さんの入っていないホールでの音響が良かったのと、合唱のまだ疲れていない声での収録だったことがその理由です。

聴いてみて思うのですが、やはり我々はライブ向きの合唱団です。(笑)
ゲネの録音と聴き比べるのですが、その違いは歴然です。
ゲネでの録音も一生懸命演奏するのですよ。
ライブと乗りを違えず演奏しようと皆臨みます。
しかし、これが後で聴くと違うのですね。
ライブでの演奏は、声量も、声の張りも、集中度(これは当たり前ですね)も、音楽の流れも、つまり演奏の底に流れる一本の緊張の糸というのでしょうか、それがピーンと張られたものになっているのです。
結果、小さなミスもあるのですが、それ以上に演奏の意図がはっきりと出ている演奏となっています。
合唱団はお客さんのいないところでの演奏は苦手、お客さんに向かっての演奏が好き、ということなんですね。

ただ、今回の演奏会で気がついたのですが、皆の録音に取り組む姿勢に余裕が出てきているように思われました。
これはきっと、CD録音のための演奏を今年経験したせいではないかと思います。
当初はマイクに神経質でした。そして要らぬ力みや堅さもあったと思うのですが、それが良い意味で緊張に繋がるということはあっても、マイナスに繋がるといったことは無くなったんですね。

当日沢山の方々に聴いていただくことができました。
このシリーズでの最高入場者数になったそうです。

「ライブ」が一番、と私は言ってきました。
音楽のすばらしさは会場に出掛けること、そして演奏者と共に演奏空間を創造すること、その瞬間しか体験できないことを会場に集まっている全ての人たちと享受することにあると主張してきました。
CD鑑賞は音楽(音)と聴いている人との対話ですね。
二人だけの、あるいは聴いている人の親密な時間の流れです。
しかし、「ライブ」は違うわけです。
「私」以外に沢山の人々の息吹、息があるわけなんですね。
この沢山の人たちと空間を共有する、その要素が加わります。
その「ライブ」にこだわる私がCDを作り続ける。
矛盾してますね。(笑)

でも、その意図は明らかです。
会場に来られない方々にその一端を知っていただきたい。(本音はそれを聴いて是非とも我々の「生」を聴いていただきたいのですね)
そして、作品を知っていただきたい。
作品を聴く機会の少ない方々に、その資料としてもまた演奏する際の参考にしていただける<たたき台>としても意義あるものになればと思っています。
これからも沢山の素晴らしい作品を演奏し、また録音も続けたいですね。

年内の発売を目指して作業は進められます。
多くの方々に聴いて頂ければ嬉しいです。

No.389 '01/10/6「「邦人合唱曲シリーズ」の録音」終わり