No.421 '02/3/24

「雪舟」特別展


22日(金曜日)、東山七条にある京都国立博物館で開催(2002/3/12〜4/7)されている没後500年特別展「雪舟」に行ってきました。
切手になった国宝「秋冬山水図」、同じく国宝「山水長巻」「天橋立図」など、総点数120余りにも及ぶ大規模の「雪舟展」でした。

水墨画、昔よく見ていたのを覚えていますが最近は離れてしまいましたね。
バロック音楽をするようになってからというもの、いつのまにか関心は西洋画に移り、構図であるとか色彩であるとか謎解きなどに頭が捕らわれていました。
「雪舟」という字に何かしら郷愁に似た想いを持ったでしょうか(「涙でねずみの絵を描いた」という話を思い出しました)、出掛けてみたいと強く思ったのでした。

しかし、行ってみて確認しました。
随分私はこの世界から離れてしまったと。

大規模な「雪舟展」でした。
1日ではちょっと全部を見て堪能するのは無理だと思います。
ゆっくりと見なければ、と思うのですがいつものように時間も余り取れず大忙しの通り抜けになってしまいました。
おまけに人の多いこと。
入るときは<入場制限>があったほど。
人の頭で作品は見えません。
また、作品に近づくのも一苦労、途中で<人疲れ>で帰りたいと思いました。
それにしても「「雪舟」大人気です。

雪舟・・・・、1420年岡山に生まれ、若くして京都の相国寺に入って禅と画の修行、30代には山口の守護大名大内氏の庇護のもとで絵を描き、40代後半は足掛け3年に及ぶ中国留学。
帰国して九州や東国の各地を遍歴後、80余年にして1506年頃没する。
力強い筆致と大きく堅固な構成が特徴とされています。
画道一筋
純粋で前向きな生きざま
これ、今から500年ほど前の話です。

私の心の風景とは随分かけ離れてしまった画風ではありましたが、実はこの展覧会、私にとってはとても大きな意味を持ったかもしれません。
それは雪舟が生きた<時代><生きざま>そして<作風>の内に見て取りました。
当時の先進国であった中国への憧れ、肌の合わなかったであろう京都からの脱出、そして日本人離れした力強い筆致と堅固な構成。
どれをとっても個性がみなぎっています。
精緻な筆、静かなたたずまいといったそれまでの画風からはみ出た作風です。
時代の変動期、彼もまたその歴史の流れの中で漂った一人でしたが、己の道を究めようとした実直な一生。
500年前のことです。その歩みはその後に引き継がれ大きな影響を与えました。

いつの世も、<静>と<動>、<柔>と<剛>、<細やかさ>と<大胆さ>との葛藤です。
人はその間で揺れ、自らの生きる指針を築こうとします。
雪舟の画を見ながら、日本人には珍しいその力強さに感銘を受けました。

最近、私の音楽作りが<柔>になってきたのかな、と思うことがあります。
この作り方が軋轢が少なくて済むのですね。
しかし、雪舟の画を見ながら自分の中の<骨太の線>が動き出したのを感じました。
<繊細>と<力強さ>、それが私の特徴だと自分で思っています。
<繊細な点と線><大胆な線とその流れ>
音楽で示し続けようと思いました。

今日(24日)は「受難週コンサート」
雪舟の影響があるか?(笑)
これは私の今後に関わる大きな出会いになったかもしれません。

No.421 '02/3/24「「雪舟」特別展」終わり