No.460 '02/10/3

東京都合唱コンクール(高校部門 A B グループ)


中学校部門に続いて高校部門 A Bグループを当日のメモをもとに審査の感想を書きます。

皆さんが一生懸命演奏して下さった音楽を評価するという役を担ったわけです。
私がどのようにそれらを聴いたかを明らかにすることもまた必要ではないかと考えます。
「講評」をお渡しすることになっていたらしいのですが、<聴きながら><講評も書く>というのが苦手です。
役員の方にお願いして後ほど事務局に送らせていただくということにして頂きました。
それに先だってまず、ホームページに書くことにします。(これを後に送らせていただきます)
当然のことですが、これは私の感想であって、他の審査員の方々の意見を反映させたり代弁したりすることではありませんのでくれぐれも誤解を生じませんように。
もしご意見などがありましたら私までメール(toma@collegium.or.jp)を頂ければ嬉しく思います。

(高校部門 Aグループ)

大妻高等学校コーラス部
よくハモっていましたね。聴きながら少し違和感をもったのでステージを見ずに、目を閉じて聴きました。
違和感の原因は二つ、先生の指揮振りと、並び方(パート別に少し間を開けたと思うのですが、少し開け過ぎではないかと思います)に感じました。
まぁ、見た目よりは「音楽」ということなのですが、やはり音楽の流れが滞りがちに聞こえてしまいました。

順心女子学園
よく練習されたのではないかと思わせる演奏でした。
音楽も面白く流れも良かったと思うのですが、私には胸声によるハーモニーに違和感を持ってしまいました。
音楽作りが良かったのですが、楽譜から逸脱するギリギリのところだと感じました。楽譜に書かれた様々な指示を細かく意識した演奏が基盤となるとよいと思うのですが。
またデュナーミクも狭かったのではないでしょうか。
5位銅賞。私も5位をつけています。

国立音楽大学附属音楽高等学校合唱部
柔らかく、深く落ち着いた歌の世界を聴きました。
発声も違和感無く、響きの広がりもあり、楽譜に忠実な丁寧な演奏だったと思います。
2曲目の早く細かいリズムでは言葉が不鮮明だったのは残念でした。
1位金賞。私も1位をつけています。

共立女子第二高等学校コーラス部
中高音域は気にならなかったのですが、低い音域での胸声が気になりました。
ハーモニーもそのために濁っているように私には聞こえました。また最後のGの和音が決まらなかったのではないでしょうか。
課題曲はもう少し明るいほうが良いと私には思われます。自由曲の一曲目は、内容的に私には情緒が勝ってしまっているように思われました。宗教曲の難しいところです。2曲目は良く揃った声で声量もありノッた演奏でした。
3位金賞。私は4位をつけています。

富士見丘高等学校
合唱の魅力はやはりハーモニーにあると思っています。
どうしたらよりよく響き合うかこれからも探っていって下さいね。
課題曲のテンポが良かったです。しかし響きが弱いですね。きっと発声を研究されたら良くなると思います。

東海大学菅生高等学校合唱部
音程の取り方が曖昧ですね。これではハモらないでしょうね。
勢いだけでは音楽になりません。(でも私は勢いだけ、というのも実は好きなんですよ)
高音での喉が締まることにも関連するのですが、発声法の見直しがこれからのハーモニー作りの上で必要だと感じました。

杉並学院高等学校合唱部
音楽の流れがスムーズで安定感のある好印象のものでした。
しかし、ハーモニーの響きが少し低いのですね。(鼻の下あたりにあたっているようです)これはこれでハモるのですが、もっと広がりのあるハーモニーを作るために、おでこから頭頂の間で響かすのが良いと私は思っています。
演奏では声域によって響きの場所が上下していました。言葉や音楽のフレーズによる響きの移動だと納得できるのですが、あまり私にはその妥当性は感じられませんでした。ぜひ、これからは<響きの場所>を意識された演奏をされるとよいのではないかと思います。
2位金賞でした。私は3位をつけました。

共立女子高等学校音楽部
感情がこもった演奏で良かったです。しかし、高音がつまるのですね。
2曲目(課題曲)は意味が、内容が解る演奏だったと思いました。なかなか宗教曲をこのレベルで歌うところは少ないですね。
言葉の発音が良かったと思います。後は発声、そしてできれば音程の取り方(音律)にひと味魅力を増し加える演奏となればいいなと思って聴いていました。
4位銀賞。私は2位をつけました。

(高校部門 Bグループ)

東京朝鮮高級学校
歌のパワーが伝わってきますね。感情を込めた歌はやはり人の心を掴みます。
胸声が強いハーモニーも彼女たちが歌うと根っこに流れる<個性>として聞こえるのですね。
合唱とは何か?音楽とは何か?民族性と音楽の関係、などいろいろ考えさせられます。
銅賞でした。

東京都立府中西高等学校合唱部
大勢の合唱ですね。その合わせることの難しさを感じさせないほどの統一性です。
声は大人の声でしょうか。響きが胸に落ち、深い響き作りをされているのかもしれません。しかし、そのためか私には日本語が西洋風に聞こえました。
モンテヴェルディの曲をこの人数で歌われるのですね。本来は少人数のアンサンブルで歌うことが多いですね。ちょっと楽しみに聴かせていただいたのですが、細かい動きもよくそろえた訓練された合唱ですね。
ここからは私の音楽的志向との絡みになるのかも知れませんが(私は京都でモンテヴェルディのマドリガルの全曲演奏を続行中です)ロマンティックな様式感を持った演奏だと聴かせていただきました。ルネッサンス様式を踏まえたバロック音楽と捉えると、少しロマンティックな要素が強いと感じてしまいます。
発声、選曲、様式等において評価に少し迷いが生じましたね。
2位銀賞。私も2位をつけました。

早稲田大学高等学院グリークラブ
いわゆる男声の響きですね。(ちょっと意味不明ですね)
これも私の音楽観とのズレを感じるのですが、変に大人びた響きは<不自然>だと聞いてしまいます。
なんとなく男の声、という感じなんですね。私の耳には徹底されていない(訓練されていない、方向性のない)不統一の響きとして聞こえてきました。
ピッチが上下するのも気になります。音程の悪さが原因ですね。
そのいわゆる<男声の響き>が自由曲の日本が何故か西洋風、不自然なものとして響くことに違和感を感じてしまうんですね。
3位銅賞。私も3位でした。

大妻中野高等学校合唱部
課題曲は響きも落ち、高音もつまりがち、でいて声量があるものですからちょっと聞きづらかったですね。
しかし、自由曲は違うんですね。
この差にはびっくりしました。
自由曲はホールの響きをよく掴んだ演奏。
1位金賞。私も1位をつけています。

No.460 '02/10/3「東京都合唱コンクール(高校部門 A B グループ)」終わり