No.520 '03/9/8

NHK全国学校音楽コンクール関東甲信越ブロックコンクールに想う


NHK全国学校音楽コンクール[関東甲信越ブロックコンクール]の審査のため埼玉県大宮に行ってきました。
朝早くからの移動で少し疲れてはいましたが、演奏を聴くことの楽しさで行くわけですから苦にはなりません。
しかし今回、小学校、中学校、高校と聴き終わって感じたことはのし掛かってくる「重苦しさ」でした。

どれも判で押したかのような演奏。
しかもその演奏は決していい加減なものではないのですね。
どの演奏も隅々まで神経の行き届いた丁寧な指導によるものばかりです。
練られ、計画され、まとめられ、隙間を残さないアプローチ。
これらの演奏、レベルが高いと言われればそうなのですが、しかし私には変化が乏しく、同色の演奏としか感じられません。(その原因となるものは後で書きますね)
何故か「優等生」をイメージしてしまいます。
優等生の演奏を選べというのならばそれはできるのですが、沢山の優等生の中から更に優劣を決めるべく、評価して順位をつけなければいけないというのは悩みが大きいです。

結局「重箱の隅をほじくる」ようなあら探しになってしまうような気がするのですね。
どれもハーモニーはきれいです(私が思うハーモニーとは違いますが)。各パートが協調しあうアンサンブル力も確かなもの、フレーズの作り方も工夫した跡があってそつなく流れます。
これら、私にはどれも「勉強の音楽」として映ってしまいました。
私はそれらを超えたところでの「生きた演奏」が聴きたいのですね。
心を揺さぶる、演奏する者の鼓動が脈打つ、「躍動する生きたリズム」が聴きたいのですね。
ハーモニーが広がり、響きわたり、言葉が飛び交う音楽が聴きたいと思うのですね。

私を「重苦しく」感じさせたもの、それは大きく二つです。
一つは「胸に響く」低く、重く沈む発声であり、それにともなう変化に乏しい声色、音色。
そしてもうひとつは「弾まない」リズムです。

「胸に響く」発声では高音は伸びません。さらに響きが落ちるためにピッチが低く感じられます。(結果ハモリません)
フォルテは強いものになるのですが、押しつぶすような要素が加わるため聴き手の胸部に重苦しく迫ってきます。
それに「胸に響く」声では各音域に共通する言葉の明瞭さが失われます。
明るい発声を提唱したいと思っている私です。
明澄な響きによる明確なイントネーションとハーモニー、そして言葉の獲得です。
それらを使って、演奏者の「想い」を放ち、表現する演奏が望みです。

今回の演奏の9割方が「胸に響く」発声でした。
少し、カルチャーショックです。
この中で、私が提唱する明るい「鼻から額、そして頭頂に響く」声が解っていただけるか、とても心許無いのですが・・・・・・。
実際に聴いていただくといいのですね。
私が合唱団を指導して変化していくのを聴いて頂ければ解っていただけるかもしれません。
リズムのことと併せて発声が変わればどんなに合唱の響きの世界が広がるか。体験して欲しいとつくづくコンクールを聴かせていただきながら思ったことでした。

これは以前から考えていたことなのですが、東京近郊で私の「合唱講座」を開いてみようかなぁと真剣に思い始めています。
今までにも沢山のMailによる発声の質問に答えてきました。文章では説明しきれないものでも、実際に聴いて頂ければ直ぐ理解していただけるものです。
また「百聞は一見に如かず」ともいいます。見ていただければ瞬時に理解していただけると信じます。
私自身が動いて準備すればいいのですがなかなかその時間が取れません。(それが理由で実現できなかったのですが)
誰かお世話していただける方がいらっしゃったらそれこそ喜んで「出掛けよう」と思ってしまった今回の経験でした。
私が東京へ出掛ける時などに行えば良いかも知れませんね。
とにかく歯がゆく思う気持ちがこんなにも強くなったことはありません。
それほどに期待と困惑が行き交ったコンクールの会場でした。

さて、今回も各学校ごとに私の評価を述べさせていただこうと思います。
それが私の責任の取り方です。
皆さんが貴重な時間と思いを費やされ、一生懸命練習して来られたものに対して十分ではないかもしれませんが、お礼を込めた私からのメッセージです。
もし読んでいただいてご質問などありましたらMailを送って下されば良いかと思います。
忙しくしているものですから直ぐにはお返事できないかもしれませんが、何とか答えたいと思っています。

今しばらく更新には時間がかかるかもしれませんが以下のページに掲載する予定です。

マイヌング(意見)


No.520 '03/9/8「NHK全国学校音楽コンクール関東甲信越ブロックコンクールに想う」終わり