No.522 '03/9/13

NHK「中国ブロックコンクール」


関東甲信越ブロックに続いて、中国ブロックのコンクールため、広島に行って来ました。
その感想です。

楽しい【小学校の部】
心地よい疲れの【小学校の部】でした。
「楽しかった時間」というのが私の感想です。
とにかく個性豊かな、さまざまな顔をもった演奏が繰り広げられました。
しかも私が提唱する「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」の声がいっぱい聞こえてきます。
明るく、パワフルに、そして明澄な響きを持って。
(「ヴォーチェ・ディ・フィンテ」が「?」の方には申し訳なく思うのですが、ここでは詳しく説明できませんのでこのホームページの「合唱講座」を参照していただければ嬉しいです。)
ハーモニーが、それぞれの表情をともなって豊かに、そしてどんどん客席に飛んでくるのですね。

去年はこのブロックから全国での金賞が出ました。
今年はどのような傾向かと楽しみで来たのですが、期待に違わず充実した内容だったと思います。
メッセージ性があるというか、個性的で、何を歌おうとしているかハッキリとこちらに伝わってくるのですね。
細かく言えば発声にはばらつきもあるのですが、音楽ではそれぞれに楽しむことができました。

ちょっと辛かった【中学校の部】
この部の講評を担当したのですが、これが辛かったですね。
先ず、声が会場に飛んでこない。
響きもステージ上にこもっているようで広がって来ないのですね。
それぞれには良いところもいっぱい見え隠れするのですが、バランスの取れた演奏が少ないのです。
前日の小学校の部が響きも声も、表現もどんどん飛んできたのに比べると「聴き劣りしてしまう」と思わせる演奏が多いと感じました。
「講評」の原稿メモには
■中学校から大人の響きへ成長しなければ。
■混声→女声と男声のバランスを整えること。倍音の聞き取りを。
■女声→多彩な音色を
■外国曲を演奏するためには平均率でない純粋なハーモニーの体験と、ピュアな響きの体得を と記しています。
とにかく、ホールの鳴りが悪いということ、そして感情をともなった言葉が聞けない、という印象で終わってしまいました。

悩んだ【高等学校の部】
何を悩んだか。
それは何を評価するか、です。
曲のまとめ方や声の飛ばし方、いわゆる「合唱音楽」としての立派さや的確さを評価するのか、それともそれぞれの想いが入った響き(音楽)を評価するのか。
実はそう書きながらもそれぞれに欠点もあって、もう混戦状態です。
決定打がない。何かが不足しているのです。「これだ!」といったバランスの取れた演奏がないわけですね。
皆、小差で並んでいる状態なのです。

「コンクール用の演奏」ってあるんですね。
私、これ苦手です。
巧い演奏、立派な演奏、風格のある演奏、型通りの演奏(?)、それぞれに聴かせる演奏なのですが、演奏者の「生きた響き」が聴けないのは私には苦痛です。
今回の審査、実は少し「しこり」を私自身に残しました。
コンクール用の演奏に採点が少し傾いたきらいがあるのです。

私はこれまでも一貫して「意欲的な演奏」「斬新な試み」「生き生きとした表現の演奏」を評価しようとの思いで採点してきました。またそれを示すことでコンクールの採点の幅も広がり、面白くなればと願ってお引き受けしている仕事です。
つまり演奏者にとっての生の息づかい、「切実性」を評価したいとの思いなのですね。
今回の高等学校の演奏で涙した演奏がありました。
生徒達の思いがずしりと伝わったフレーズに思わず涙してしまいました。
しかし、その演奏を私はトップにしなかったのです。
何故か・・・・・。
これは色々な要因が絡まってはいるのですが、「コンクール用」の演奏ではない、これを全国に送るのはふさわしくないかもしれないと思ってしまった結果でした。
今更ながら痛恨の極みです。
私一人の採点によって大きく順位が変わることはなかったと思いますが、せめて、その評価をもっとハッキリしたものとして示しておくべきではなかったかと今強く思っています。

歌った生徒たちに何を伝えるか。
聴いていた人たちに何を伝えるか。
未来に何を託すか。
審査するものとしてその責任を感じます。

忙しくなってきた私です。
全校に対するコンクールでの私の感想を掲載するのは時間的に厳しくなりました。
じつは他に書きたいことがあって、今滞っている状態でもあるのですね。
各校にはNHKから私の個別の講評が行くと思いますが、もし何か意見やお聞きになりたいことがありましたら私宛にMailを頂ければ、できる範囲でお答えしたいと思っています。
上の事情で返信が少し遅くなるかもしれませんが、そのことはお許し下さい。

No.522 '03/9/13「楽しい[中国ブロックコンクール]」終わり