歌にでる鳥シリーズ3[海鳥の詩より]


今度シュッツ合唱団の邦人合唱曲シリーズで、廣瀬量平作曲の「海鳥の詩」を演奏する。
その名の通り、海鳥を題材に使った詩で、オロロン鳥、エトピリカ、海鵜、ケイマフリ、の四種類の海鳥が登場する。
今回はその四種類の鳥たちのお話である。

ウミウ以外は、ウミスズメ科の鳥でペンギンのような姿をしている。(余談だが、ペンギンとは南半球のどこかの言葉でウミスズメのことを指しているらしい)
楽譜の解説に本州にはいない、みたいなことを書かれているがそんなことはない。東北や、中部でも生存している。もちろん北海道が中心ではあるが。
おそらく詩が書かれた頃には観測技術の問題上、北海道でしか確認できなかったのであろう。

オロロン鳥は、和名をウミガラスといい、黒い背中と白い腹、そしてペンギンによく似た形をしている。
繁殖期に鳴く声がオロローン、とか聞こえることからオロロン鳥と呼ばれる。
歌詞の中に「岩棚の歯の上に命温め」とあるが、オロロンと鳴くのは繁殖期で、ウミガラスは岩棚に営巣することから単純に考えて卵を温めているのだろう。
ウミガラスは一年に一つしか卵を産まない。北の海の自然との戦いは凄まじいものであろう。

エトピリカはアイヌ語で美しい嘴の先、とか美しい鼻とか言った意味があるらしい。黒いからだに白い顔、風変わりな飾り羽、赤と緑の美しい嘴の小さな鳥で、ぬいぐるみのようである。
私もいつかは見てみたいと思うような美しさを持っている。
しかし彼らは霧の中を飛び、その美しい姿を見ることは希であるという。おいらんがもと呼ばれることもある。

ケイマフリはアイヌ語で赤い足という意味らしい。黒いからだに赤い足が鮮やかな海鳥で、冬には比較的、南下してくる鳥である。
目の回りの白い模様がオシドリを思い出させる。

ウミウは長良川などで鵜飼いに使われることで有名な黒く大きな海鳥。日本海側で繁殖し、冬は全国の岸辺に見られる。
歌詞に「鵜は啼かない」とあるが少々は鳴くであろう。派手に鳴くことはないだろうが、仲間とコンタクトを取るくらいには鳴くであろう。まぁ図鑑にも鳴き声は載ってなかったが。

この黒い海鳥たちの北の海で風雪に耐えている姿は、日本人の心を刺激するのだろうか。
この曲集「海鳥の詩」は人気があるらしい。
東北や北海道の合唱団はかなりの確率でこの歌を一度は歌うらしい。

この鳥たちが風雪に耐える姿に思いを馳せる人は、数多くいるだろうが、今この鳥たちがおかれている状況、人間の作った困難に翻弄される鳥たちに思いを馳せる人は、果たしてどのくらいいるのだろうか。

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