第3の解[パンダロン]

『ベートーヴェン・ハウス』

ついに、パンダロン先生登場!この旅行記は2人で『バラバラ』に進めて行きます。どうぞ混乱なさいませんように。(^^)

ルンの街から逃げるようにしてボンの街に着いたのは、もう日の傾きかけた頃であった。何とか宿を見つけ、夕食にありつく。ホッと一息ついてビールなど飲んでいると「あぁ、彼の生まれ故郷にきたのだなぁ」と実感されてくる。彼とは勿論ベートーヴェンのことである。
うえお注釈:ケルンの街から逃げ出した理由は、そのうち触れる事になるでしょう。(^^;)

ベートーヴェン・ハウスはもう閉館している時間ではあったが、建物の前に行ってみることにした。それはボンの街角になんの際立ったところも無く、さりげなくあった。ただ扉や雨戸だけは緑と赤に塗られていて意外にモダンな印象がした。閉じられた扉にふれてみた。「来て良かった」と強く思った。この家で彼は生まれたのである。

翌朝、ボンの街、ライン川の畔を散歩した後に再びベートーヴェン・ハウスを訪れた。今日はじっくりと内部を見る。一度は文献で見たことのあるような資料を実際に見ることができた。

補聴器。それは思っていた以上に大きくて、とても実用的とは思えない代物であった。耳の病を誤魔化せなくなった彼がその思い、決意を綴った『ハイリゲンシュタットの遺書』。鍵盤のすり減ったピアノ。
肖像画が数枚。そのうちの一枚の前でベートーヴェンと対峙する。真っ直ぐに前を見通す鳶色の瞳。強靱な意志によって引き結ばれた口元。本当に彼が目の前にいるような気がして、しばし見つめ合う。
死に関する資料。遺書に記されたサインには手の震えがはっきりと見て取れる。ライフマスクの横に置かれたデスマスク。彼の死が生々しい。

建物の一番奥は彼の生まれた部屋であった。それは天井の低い屋根裏部屋であった。

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