第5の解[うえお]

『パリの地下鉄詐欺師』

ーロッパの都市では大抵、トラムやメトロなどの都市交通網が発達しています。トラムとは、路面電車の事です。そしてメトロとは地下鉄のこと。特に、パリのメトロは有名ですね。

僕たちは、パリに列車で入りました。パリにいくつかある駅のうち、パリ北駅(Gare de Nord)に到着しました。国際列車が発着する大きな駅です。例によってホテルの予約は取っていませんから、駅から何軒か電話を入れてみました。が、手頃な値段のホテルはみんな満杯です。仕方がありませんから、ホテルが密集しているらしいソルボンヌ近辺まで、行ってみることにしました。

とりあえず地下鉄に乗ら無ければなりません。『○×の歩き方』によると、切符は窓口と自販機のどちらでも購入が可能だが、窓口はいつも長蛇の列で自販機は操作が非常に厄介だとか。さらに、観光客に法外な値段で切符を売りつける、詐欺師まがいの輩も多いとの事。気を付けなければなりません。

さて、SNFC(フランス国鉄)の駅からメトロの駅まで移動してみますと、本当に、窓口には長蛇の列が出来ています。それに反して自販機には誰もいません。実は僕は、並ぶのが大嫌いなんです。とりあえず『ダメもと』で、自販機の前に立ってみました。すると、おじさんが話しかけてきました。少し薄汚れてはいますが、一応、浮浪者とは見えない身なり(ジーンズに前開きの襟付きシャツ)です。

お:『どこまでいくんだ?』
う:『市内をぐるっと。』
お:『じゃ、これだ。』
と言うなり、自販機をポンポンポンッと操作し、料金を表示させます。で、お金を入れろ言うのですが、僕がまごまごしていると、自分が持っていた小銭をどんどん放り込んで行くでは無いですか。おいおい、ちょっと待てよ、言いたかったのですが、意に反して僕の口から出てきた言葉は、

う:『いや、僕らはカルネを買うんだ。』

自販機で買う『カルネ』。
カルネとは、回数券の事です。これも『○×の歩き方』によると、地下鉄の1回券は8F(フラン)。それに対して、10枚綴りのカルネは46Fです。断然、こちらがお得です。

お:『そうか、じゃこれだ。』
と、そのおじさんが表示させた値段が92F。『おいおい、随分高いぞ!?』とは思った物の、別名『○×の迷い方』とも呼ばれるガイドブックの情報です。しかも、向こうさんは自販機の料金表示を明示させているのです。もしや大幅値上げがあったのかなぁ?

そうこうしているうちに、こちらの意見も聞かずに自分のお金をどんどん入れていきます。ま、自販機に表示されている値段通りに払えば良かろうと、そのまま92Fを払って、カルネを受け取りました。

所が、後でカルネの枚数を数えて見ると、一枚足りません。『そうかぁ、そういう商売やったんかぁ・・・やられたなぁ。』と、ちょっと地団駄を踏む思いでした。もちろん、『一体何者や、このおっさんは?』という疑問はありました。しかし浮浪者には見えなかったので、私服の地下鉄職員かなぁ、等と、呑気な事を考えていた次第です。

さて翌日。昼過ぎにはパリを出る予定なので、後3枚だけ切符を買おう、という事になりました。今度はパリ・リヨン駅です。こちらも、パリの南玄関口ですから、相当に大きな駅です。窓口はやはり大混雑しています。

自販機に近寄ると、またまたおじさんが近づいてきました。今度は、カルネの束を手に持っていましたので、それを3枚くれ、と言いました。するとおじさんは、

お:『1枚8Fだ。』
とのたまうではありませんか。(・・;)1枚8Fだったら、『○×の歩き方』に書いてある通りです。

そう、実は前日のおじさんは、自販機に倍の料金を表示させていたのです!
恐らく、自販機の取り出し口にはさらに11枚のカルネがあったのでしょう。おじさんはまんまと、11枚のカルネを手に入れた訳です。そしてこのカルネを、旅行者相手に1枚8Fで売るのでしょうから、結局88Fの稼ぎになるわけです。

見事にやられました。ここまで見事にやられると、逆に腹も立ちません。おかげで時間の節約が出来たと、逆に感謝したいほどの気持ちです。(ウソ)

結局僕たちは、50Fばかりの損をしたのですが、50Fあればパニーニが4つ、パニーニとコーラのセットでも3つも買えてしまいます。2人分の昼食代くらいにはなったわけです。

『パニーニ』=屋台で売っている、ホットドッグ風のサンドイッチ。結構いけます。(^^)
皆さんもパリでメトロに乗るときは気を付けましょう。バラ売り切符なら、これらのおじさんたちから買っても良いでしょうが、カルネを買うなら窓口に並ぶべし。(バラ売りの方も、値切れば安くなったかも?)


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