『見渡す限りの田園風景 みちのく一人旅'99その9』
(2003/06/02)

 花巻農業高校を後にして、次の目的地、賢治記念館、イーハトーヴ館、童話館へと向かいました。
 
 僕はあえて、来た道を戻らずに少し東へ向かって南下するコースをとりました。国道沿いに行くと、目的のものはありますが、あえて横道を選びました。
 
 その両側はひたすら田圃。舗装されている小さな道をただただ走るだけです。雲も晴れてきて、気温はどんどん上がっていきます。むせ返るような、実った稲穂の香り。その上を涼やかな風がわたっていきます。自動車道から離れるほどに言い様のない静寂に包まれます。聞こえるのは稲穂を揺らす風の音だけです。
 
 説明はいらない、とにかくそこを走っているだけで幸せな気分になります。勝手気ままに思った道を進みます。その一瞬一瞬が絵になる風景なんです。そして、先を見てみたくなる風景なのです。
 
 とにかく「道」が良い、絵になる、そんな世界です。
 
 もちろん勝手に走っているので、行き止まりで引き返すこともしばしばなんですが、それもまた楽しいのです。
 
 やがて新幹線の高架が見えてきました。それに沿っていき新花巻の駅が見えたら目的地は近いのですが、それらしい雰囲気は感じられなく少し不安になり、おばあさんに道を尋ねました。
 
 こんにちは、暑いですねぇ、と会話が始まります。わらの笠をかぶった、かわいいおばあちゃんです。
 
「この道さ、いっしょげんめ、はすったら、
   こっつさに(と道の左側を指して)看板が見えてくるなは」

 柔らかい、優しい響きの方言でした。僕はおばあちゃんにお礼を言って一生懸命(^^)、自転車を進めました。
 
 おばあちゃんの言葉通り、新幹線の新花巻駅が左手に、正面に釜石線の線路が見えてきました。しかし進むべき先には長い緩やかな坂道が・・・・。
 
 ・・・?地図の通りだと線路越えて真っ直ぐだよなぁ・・・
 
 ・・・・まさかなぁ・・・・・


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