2002/10/3
<邦人合唱曲シリーズを終えて 〜シアターピース初体験〜>

(今回の担当:Alt. 戸井恵子)

9月28日(土)邦人合唱曲シリーズvol.8の演奏会が無事終了しました。
ぐずついたお天気の中、沢山のお客様にご来場いただきありがとうございました♪

申し遅れましたが、私アルトの新人、戸井恵子と申します。
8回目を迎える邦人合唱曲シリーズも、私にとっては入団して2つ目のステージにして初めてのシアターピースを含む演奏会。 しかもCDの為のライヴ録音を行うという更なるプレッシャー。終わった今でも記憶がとぎれとぎれという緊張したステージでしたが、私にとっては忘れられない演奏会となりそうです。

そもそも曲との出逢いが強烈でした。 
今回演奏会でとりあげた3曲、鈴木憲夫「永久ニ」、千原英喜「銀河の序」、柴田南雄「遠野遠音」の楽譜を手にした時、自分自身の中にひとつのテーマが浮かび上がりました。それは「自分の中に受け継がれている日本人の遺伝子」ということです。
どれも時代は違うけれど、歴史の中のある時代、ある場所、ある人物などに触発されて作曲された作品です。まず最初に、歌詞と現代語訳を音読してみて、涙が止まらなくなり、しかも自分でも何故だかわかりませんでした。ただ、自分のDNAの中にも各々の時代の精神が受け継がれているのを感じる、とでもいうのでしょうか。
帰国子女のせいか性格のせいか、とかく日本人らしくないと言われてきた私がそう感じたのですから本当に不思議です。聴きに来て下さった皆さんもきっと持っているであろうその何かを、演奏を通して伝えたい、そう思いながら歌っていました。

そして、シアターピース。
先にも述べたように、今回演奏したうちの1曲「遠野遠音」は私にとって初めてのシアターピースでした。とは言っても、「シアターピースだから、暗譜だし、大変だよー。」と言われても、何がどう大変なのかやってみるまではピンとこなくて、ちっともわかっていませんでした(笑)。
例えば第3章では、まず担当の歌を決めることになり、ここで歌の数だけ分かれる訳ですから人数が減り、ちょっぴり心細くなりました。でもこれはほんの序の口。同じ歌を担当するグループの中で高声と低声でペアになってと言われ、更に不安がつのります。それを指揮者の指示した場所で、指示したタイミングで歌う・・・、だんだん頭が真っ白になってきました(幸い私のところはペアではなく3人だったので、ちょっと心強かったです!)。それだけではありません。練習場が変われば、響きも聴こえ方も変わる。指揮者に指示される順番が変われば響きの重なりも変わる。人間ですから日によってピッチも変わる(変わっちゃいけませんよね!?)。しかもこうした変化に人間って思ったよりもずっと敏感に反応するものなんだとつくづく感じました。(いい意味で敏感に反応する人もいると思うのですが、私の場合は動揺の方が多かったでしょうか。)シアターピースって、本当に「唯一無二」のものなんだ〜と、この辺りでやっと大変さを納得・・・、している間もなく本番、でした。

そんな訳で、聴きに来て下さった皆さんとは、あの場所で、あの時、あのメンバーでしか味わえない「唯一無二」の時間を共有できたわけです。本当に暖かく聴いて下さったひとりひとりの皆さんに心からお礼を言いたい気持ちで一杯です。来てくれた友人や知人から「日本の曲ってあんまり聴いたことなかったんだけど、じ〜んときたよ〜!!」「遠野遠音は特に感動ものだった!」とメールをいただき、本当に嬉しかったです。シアターピースを通して自分自身の課題もひしひしと感じた演奏会ではありましたが、それ以上に学んだことも大きかったのではないかと思っています。

と、邦人シリーズの余韻に浸っている間もなく、10月14日はシンフォニア・コレギウムのベートーヴェン・シリーズです。合唱団も短い曲ですが2曲ほど演奏します。邦人シリーズで「唯一無二」の時間を共有することができた皆さんと、そして前回は残念ながらお会いできなかった皆さんとも、ベートーヴェン・シリーズでお目にかかれるといいですね。


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