No.609 '06/03/12

「名古屋ビクトリア」の「定演」を終えて


昨日、「名古屋ビクトリア合唱団」第二回定期演奏会が終わりました。
ハードな選曲 です。
6時半に始まった演奏会、休憩を挟んで終演が9時を回っていました。

前半にラテン語による「アベ・マリア」とビクトリアの大曲「テネブレ」から。
これで一時間の演奏時間です。
去年創立した合唱団に私が二年目に課した課題は、統一された発声によるハーモニーと作品に対する集中度です。
それにふさわしい選曲として上記の曲をプログラムに加えました。
これらは全部ア・カペラ(無伴奏)。
ラテン語による「マリア賛歌」とイエス・キリストの受難を記念する祈りがその内容です。
「マリア賛歌」は時代別にそれぞれ違った作曲家を選びます。まだ現代のような調性感ではなく、移ろいの調性過程。
「旋法」のハーモニーを体験します。

「テネブレ」はイエスの十字架への悲しみの道、その慟哭を伝えます。
作曲家「ビクトリア」の精緻な書法、そして劇的な熱情の表現がその特徴です。
時間の関係から全曲はできなかったのですが、練習では全曲を歌っています。
全18曲からの10曲ですが、演奏には緊張の持続が要求されます。
本来ならば楽器を重ねての演奏も考えられますが、無伴奏であえて挑戦です。
これを歌いきった時、合唱団はテクニックとしても歌い手としての精神も大きな飛躍となるだとうとの思い。
それは今回終えて、成功したと確信しました。

後半は日本語による選曲。
先ずは武満徹の「うた」から。
今回もたくさんのアンケートを頂いたのですが、その中でも印象に残るものとして「死んだ男の残したものは」の記述が多くありました。
「うた」シリーズは音の重なりが難しく、そのバランスも微妙です。
団員同士の信頼と協調が試され、徹底した聞き取りが必要。
おまけにリズム感が統一されなければならないときているものですから一人一人の音楽感が問われます。

最後のステージは信長貴富の「初心のうた」。
この時点で団員たちの体力、気力が試されます。
歌い始めてから二時間。
ゲネからすればすでに7時間半。
ゲネも本番さながらに歌っていますから、まさに二回演奏会をしていることになります。
大阪の「シュッツ室内合唱団」では毎回のことですが、まだ若い、経験も少ない「名古屋ビクトリア」がどこまでやり遂げるか?
しかし、演奏を終えて考えてみるに、これも及第点をつけてあげても良いでしょう。
声は少し疲れていましたが、その集中度はたいしたものでした。

4ステを終え、時計をみれば8時50分。
3曲用意していたアンコールを急遽一曲にします。
あまり徹底した練習ができなかったアンコール曲。しかし、これまでの中で一番良くできた演奏でした。
彼らの集中力の成せる技でしたね。

創立二年目の新しい合唱団。
課題は一つ一つ熟されていきます。
もう既に来年度に向けての「課題」も出ました。
「二度音程」の徹底した訓練と楽曲内容も更なる充実です。
二度音程には「広い全音」「狭い全音」があるのですが、その体得が課題です。
ハーモニーももっと多彩になっていくことでしょう。
楽曲内容の充実、それは人間としての深みと関係します。
一朝一夕にはできるはずもなく時間が必要ですが、回をますごとに成長する軌跡を示すことができればと願っています。

沢山のアンケート。全て目を通させていただきました。
貴重なご意見として今後に役立てたいと思っています。
様々な意見がありました。
対極な意見もみられました。
ある人にとって良いもの、好ましいものは、ある人にとっては良くなく、好ましくないものとして感じる。
おしなべて宗教曲は不評で日本語による合唱曲は好評。
不評というよりは、よく判らないといった延長線上かもしれません。
中には「とても良かった」と書かれた方もおられるのですが、その方は宗教曲をよくご存じ、かつ専門的知識もおありという立場にいらっしゃるよう。
読ませていただきながら、お聴きいただく全ての方々に気に入っていただくことの大変さを痛感します。

来年に向け、更なる向上を図り、名古屋から新しい合唱の響きを放っていく所存です。
多くの方々から愛されるような合唱団。
期待され、毎回の演奏が楽しみとなる合唱団にしたいと思っています。
これからもどうぞ「名古屋ビクトリア合唱団」をよろしくお願いします。

No.609 '06/03/12「「名古屋ビクトリア」の「定演」を終えて」終わり