No.('94/10/29)京都モンテヴェルディ合唱団演奏会
演奏にあたって
当間修一
「個性尊重」「個性重視」という言葉が叫ばれて久しいのですが、周りを見渡せばまだまだ本来的な意味での「個性」が育成されているとは思われません。
「個性」を伸ばすにはそのノウ・ハウが問題ではなく環境が大切、つまり「個性」を認めたり、受け入れる側の姿勢が大切です。
今まで見聴きしてきたものと違うことや、自分の価値観では計りがたいものには拒否反応が出るのは当然ですが、「新発見」や「開発・進歩」といったことに関しては「個性の尊重」は不可欠です。
社会的な認識は大きく「個性重視」の方向に流れているとはいえ、個人レベルの段階での日常性にはそれを妨げる因習、しきたりが多く残されています。
個性の発見は見聞を広げることです。そして、興味をもって一歩踏み込んで見ることだと思っています。
外から眺めているだけでは解りません。自分の領域から出ること無しに「他を理解」することなどできません。また「個性」を伸ばすことも出来ません。
音楽の分野でも同じだと思っています。
「伝統」という堅苦しさや、セクトによる偏狭といった中から「新しい流れ」「瑞々しさ」「表現の可能性」を探るためには個性的な演奏を心がける演奏者、そしてそれを育てる聴衆が必要です。
芸術や文化の向上に必要なのは、創る側と受容する側とのホットな関係です。
「京都モンテヴェルディ合唱団」は、ルネッサンス・バロック音楽の「新しい表現」を目指すことを目的として発足した団体です。今ではそのレパートリーは日本の曲や現代曲に広がっています。姉妹団体としての「大阪ハインリッヒ・シュッツ合唱団」と呼応しながら、その「個性」を磨きたいと思います。
「音楽の喜び」は精神の高揚にあります。「合唱の喜び」は心の触れ合いにあります。
「生きる喜び」は人の出会いと理解にあります。
ささやかながらも、「京都モンテヴェルディ合唱団」はその活動を通じて京都の音楽文化に寄与できることを願うものです。