八重山毎日新聞社コラム

「やいま千思万想」No.17


【掲載:2013/12/12(木曜日)】

やいま千思万想(第17回)

「大阪コレギウム・ムジクム」主宰 指揮者 当間修一

[スペインでの音楽交流に感動]

 今年と来年、「スペイン交流400周年(2013-2014年)」が開催されています。
これは1613年に仙台藩主伊達政宗がスペインのフェリペ3世へ支倉常長を大使とする慶長遣欧使節団(1613年から1620年)を派遣してから400周年を迎えたことを記念する行事です。
それを期して「名古屋ビクトリア合唱団」を率い、スペインへ演奏旅行に行ってきました(11月21日から26日)。

 日本とスペインとの繋がりは古いです。
それは日本に初めてキリスト教を伝えたあのフランシスコ・ザビエルに始まります。
戦国時代1549年でした 。
今回の訪問目的は文化交流。
ルネサンス音楽最大の作曲家、ビクトリアを冠した合唱団による聖地演奏と、日本の曲を紹介すること。
多くのサポート、関係機関のご協力によって実現したものです。

 3都市に於ける演奏会(サラマンカ〔古楽週間の一環「新サラマンカ大聖堂(Catedral Nueva)《世界遺産》、アルカラ・デ・エナーレス(マヒストラル大聖堂)《世界遺産》、首都マドリード(サン・イシドロ教会)《歴史的大聖堂》)は全て熱狂を帯びたスタンディングオベーション(聴衆総立ちによる拍手)の公演となりました。
その拍手がビクトリア作品、柴田南雄「追分節考」と共に演奏された沖縄音楽へ多大な興味と関心を示されていたことに深い感慨を持ちます。

 紹介した沖縄音楽は、瑞慶覧尚子による女声合唱曲「宮古島のたより」から「多良間よ」「平安名のマチガマのアヤグ」、混声合唱曲「うっさ くわったい」から「月ぬ美しゃ」「上り口説」、三線とパーランクーを付けての演奏。
これらの曲がスペイン屈指の伝統ある大聖堂で響いたのは歴史上初めてではないかと思います。
 演奏による最後のハーモニーが大聖堂の天井へと昇って消え去った瞬間、ため息とともに盛大な拍手が巻き起こる。
それは音楽を通じてスペインの方々との交流の瞬間であり、歌い終えた合唱団員の表情に見られた誇りと自負への私の感動でもありました。

 歴史的に大帝国として君臨していたスペイン。
その国が1900年代、国政的に不安定な時期を経て現在は観光立国として発展しています。
持ち前の陽気さ、明るさ、人好きなどが功を奏しているのだと、短い滞在ながら実感しました。
日本からは遠く隔たっている国です。
直行便はなく、私たちはドイツ-フランクフルトを経由して訪れました。
その所要時間、15時間ほど。実感は「遠い!」です。
しかし、行ったメンバーは口を揃えて「もう一度行ってみたい」と言います。

 それは高地に広がる美しい大平原の風景、世界遺産にも登録されている歴史と素晴らしい街作り、美味しい葡萄酒にパン、そして印象良いスペインの方々の人柄に接しての率直な感想ではないかと思っています。
八重山にも通じる印象ですね。
音楽による交流。
400年に続く日本とスペインの新たな一ページに成り得たのではないか、そう思っています。





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